高校生向け

S-ROOMからSound Studioへ

2025年1月31日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

こんばんわ。伊藤彰教です。

1999年に設立されたメディア学部では、2001年から演習室「S-ROOM」を設置し、ディジタルメディアのための音楽・音響を学べる演習室として運用してきました。今年度の9月より、2001年以来の大幅アップデートを敢行し、名前が「Sound Studio」にリニューアルされました。これに伴い、20年以上継続してきたWindows環境から、いよいよMacOS環境へと大幅リニューアルを行いました。

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アプリケーションも新規導入し、音楽スタジオやポストプロダクションなどのプロが使う「ProTools」が使えるようになりました。この秋から初めて導入したアプリケーションですが、産業界の標準ツールを使えるということで、熱心に練習に励む学生さんがこれまで以上に増えたのが印象的です。

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新アプリとしては、楽器音の音色を制作したり、エフェクターを開発できるツール「Reaktor」を導入し、今学期に初めて本格的な演習を行いました。アナログシンセサイザーの操作感でビジュアル・プログラミングできるツールによる演習は、教員であるわたしも学生さんも初めての経験でしたが、すでに実施しているハードウェアのアナログシンセの操作練習のあとなので、スムースに取り組んでいる姿はたいへんに頼もしかったです。以下は、学生さんが練習として組んだシステムの一例です。

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Sound Studioでは伊藤謙一郎先生が担当されるメディア専門演習の他、わたくしが担当するプロジェクト演習が開講されています。多くの学生さんがにぎやかに参加してくれています。

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リニューアルはいまも進行中であり、2025年度以降も少しずつ新しい道具・アプリがが追加され、演習で学べる内容も時代に合わせて徐々に変容を遂げる予定です。在校生はもちろんのこと、こうした分野に興味がある高校生のみなさんも、ぜひ楽しみにしていてください。卒業生のみなさんは、紅華祭など大学においでになる際に、ぜひ新しくなったS-ROOM…もとい、Sound Studioに遊びに来てくださいね。

2025年1月31日 (金)

学生・若手のためのAESジャパンフォーラム2024参加記

2025年1月29日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

こんにちは。伊藤彰教です。

昨年度2023年は、東京工科大学にて開催された「学生・若手のためのAESジャパンフォーラム」ですが、今年度のフォーラムは2024年11月に、東京藝術大学千住キャンパスにて行われました。

今年度もメディア学部生の有志が学生主体の運営委員会に参加する他、伊藤彰教研究室『exSDプロジェクト』からは、2組3名の学生さんが、音響に関する研究発表を行いました。

山地阿世流さん・鈴木開斗さん『ステレオ化された楽器音源の立体音響配置の変化による印象比較』

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三浦海響さん『インタラクティブメディアにおけるAudio Listererの位置調整に向けたテストアプリケーションの開発』

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研究発表でもメディア学部生が活躍してくれましたが、運営スタッフとしても、専門的な機器の操作スタッフとして責任の一旦を担うようになりました。

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(東京藝術大学の音響デモ機材を操作するメディア学部生岩堀さん)

AES (Audio Engineering Society)は、世界的な音響エンジニアリングの業界・学術団体です。日本支部は国際的にみてもにも活動が盛んな支部のひとつであり、音響制作に興味のあるメディア学部生はこうした活動に参加しやすい環境が整えられています。

在校生はもちろんのこと、この分野を目指す中高生のみなさんも、メディア学部のプロジェクト演習<Audio Engineering><サウンドデザイン>、そしてexSDプロジェクトに参加してもらえるとうれしいです。サウンドの新しい地平を切り拓く多くのプロフェッショナルや、志を同じくする他校の同世代の人たちといち早く仲間になれることと思います。

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(来年はどの教育機関で開催されるか楽しみです)

2025年1月29日 (水)

学部長密着動画が続々公開!

2025年1月13日 (月) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

先日、メディア学部長の密着動画を紹介させていただきましたが、その後、続編が次々とアップされています。

応用学部長 密着動画

コンピューターサイエンス学部長 密着動画

メディア学部の動画もなかなかの出来だと思っていたのですが、他学部もとても興味深い内容になっています。各学部に共通して言えるのは、学生も教員も、面白いと思えることに熱中しているときが一番輝いているということです。

もうすぐ入試の時期ですが、本学の多くの入試(A日程,B日程,共通テスト利用など)では追加費用なしで複数の学部を受けることが可能です。最終的にどの学部に入学するか迷ったときは、こんな動画も参考にしていただければと思います。

追記:工学部も追加されました!

2025年1月13日 (月)

ゲスト講義のご紹介③I&S BBDOの松井亘平さん(メディア学部 藤崎実)

2025年1月 3日 (金) 投稿者: メディア社会コース

メディア学部の藤崎実です。

「メディア特別講義I」では私の担当回に広告業界からのゲストをお招きしています。

そして2024年11月1日は、株式会社I&S BBDOのExecutive Creative Directorの松井亘平さんにゲスト講義にお越しいただきました!
ご講演タイトルは、「課題解決のためのアイデアとストーリー」です。
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クライアントの課題を解決するために広告会社ができること、その課題解決にはクリエイティビティが大切だということを、これまでに手がけた数多くの具体例を取り上げてご講演いただきました。 
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現代の広告は、その姿がなかなか学生からはわかりずらいものですが、広告の有意義な活動について、学生の理解促進ができました。

現在の広告会社に求められる様々なスキルに関して、最新の事例をもとにお話いただくことができ、多くの学生にとって有意義な授業となりました。
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「広告のもつ影響力」についてリアルにイメージすることができたようで、
履修生からも多くの質問が寄せられて、大変活気のある良い授業になりました。

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松井亘平さん、お忙しいところ、大変貴重なご講演、ありがとうございました!

(メディア学部 藤崎実)

2025年1月 3日 (金)

ゲスト講義のご紹介②アジャイルメディア・ネットワークの吉永竜馬さん(メディア学部 藤崎実)

2025年1月 1日 (水) 投稿者: メディア社会コース

メディア学部の藤崎実です。

「メディア特別講義I」では、私の担当回に広告業界からのゲストをお招きしています。

そして2024年11月22日は、アジャイルメディア・ネットワーク 株式会社の吉永竜馬さん(アンバサダーマーケティング事業部 部長)にゲスト講義にお越しいただきました!

ご講演タイトルは、「ファンと一緒に行うマーケティング」です。
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アジャイルメディア・ネットワーク株式会社(略称:AMN)は、「ファンマーケティング」「アンバサダーマーケティング」のリーディングカンパニーです。

AMN では、SNSで自身の「好き」や「〇〇愛」を発信するような、熱量高いファンを「アンバサダー」と定義し、
彼らのビジネス貢献を可視化するツール「アンバサダープラットフォーム®」を独自開発し、
ファンの組織化・活性化を支援する「アンバサダープログラム®」を提供しています。
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今までのマスメディアに頼る広告ではなく、ファンの熱量を活用した、
ファンと企業のいわばパートナーシップの活動は、新しい可能性を生み出しています。
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当日は、多くの最新事例をもとにお話いただくことができました。

なかなかそうしたリアルなマーケティングに触れることがない学生にとって興味深い、とても有意義な授業となりました。

学生からの多くの質問にも丁寧に答えてくださり、吉永さんには感謝が尽きません。
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吉永竜馬さん、お忙しいところ、大変貴重なご講演、ありがとうございました!

(メディア学部 藤崎実)

2025年1月 1日 (水)

AI時代のメディア学部にご期待ください

2025年1月 1日 (水) 投稿者: メディア技術コース

あけましておめでとうございます。

2024年は、戦争や経済などでいろいろと暗いニュースが多い年でしたが、そんな中で前向きになれるニュースとして、ノーベル賞をAI研究が席巻したということがありました。物理学賞を受賞したホップフィールド氏とヒントン氏は、物理モデルに基づくAIの学習アルゴリズムを生み出しました。化学賞を受賞したハサビス氏とジャンパー氏、ベイカー氏は、AIを使ったタンパク質の設計方法を生み出しました。

AI研究の中核となるのは情報科学と呼ばれる学問ですが、ノーベル賞に情報科学賞はありません。ですから、AI研究者がノーベル賞を受賞することは無いと思われてきたのですが、物理や化学の分野でもAI技術が欠かせないものになったことによって、ノーベル賞の受賞につながったのではないかと思います。

メディア学部が扱う分野でも、AIを使ったメディア研究の重要性が増してきています。動画生成AIの「Sora」や、声質変換AIの「RVC」など、メディアコンテンツを一瞬で自動生成してくれるソフトも次々登場しています。だったらメディア学部で学ぶことはもう無いのかというと、全然そんなことはありません。むしろ、こうした最新AI技術を使いこなすことで何ができるのか、学ぶべきことは益々増えてきています。

2025年のメディア学部は、AI時代に合わせて更に変わっていきます。皆さまどうぞご期待ください。

メディア学部長 大淵康成

 

2025年1月 1日 (水)

ゲスト講義のご紹介①/88株式会社の川上明代表取締役(メディア学部 藤崎実)

2024年12月30日 (月) 投稿者: メディア社会コース

メディア学部の藤崎実です。
「メディア特別講義I」では私の担当回に広告業界からのゲストをお招きしています。

そして2024年10月25日は、88株式会社の川上明代表取締役にお越しいただくゲスト講義でした!

ご講演タイトルは、「「判断」と「決断」−材料が少ない中で、ちゃんと「決断」ができるスキルの身につけ方−」という内容です。

88株式会社は、2024年に川上明代表取締役により創設された企業で、「組織にあった適材適所と仕組み化を実現して現場の人を活かす“ミギウデ”人材サービス」を行う、いわばハイスペックな複業プロ人材を紹介する企業です。とても現代的な企業ですね!

ただ、大変ユニークなのは川上明さんのプロフィールです。
川上さんは読売広告社でスポーツマーケティングを担当して、米国駐在も4年間経験。
さらに帰国後、ネット広告会社に転職。さらにBtoBマーケティング会社にも転職して上場までの対応を経験してきました。

(参考)川上明さん
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さらに2021年1月、新潟アルビレックスBBを運営する株式会社新潟プロバスケットボールに入社し、経営企画本部長に就任。
同年5月31日には代表取締役社長に就任して、新潟アルビレックスBBの経営を行ってきました。
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私は読売広告社時代にいくつかの仕事でご一緒させていただきました。

ご講演はスポーツチームのスポンサーとして、いかに広告主が大事か、というお話に始まり、「判断と決断」に関する大変有意義な内容でした。
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波瀾万丈でありながら一本筋の通ったお話しは多くの学生から共感を得ました。

これから人生をどのように歩むか、悩み多き学生にとって多いに参考になったことと思います。
私自身も大変勉強になりました。
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川上明さん、貴重なご講演、ありがとうございました!

(メディア学部 藤崎実)

2024年12月30日 (月)

先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」(その3)

2024年11月 8日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

本シリーズの最後となる3回目は、受講生の研究をご紹介します。

これまで本ブログで紹介した先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」 での取り組みは、その2のような機材体験でした。下記の過去記事もご興味がありましたら、ぜひご覧ください。

 ■先端メディア学/ゼミナール(ミュージック・アナリシス&クリエイション)で「打ち込み」に打ち込みました[2019.12.21]
 ■授業紹介:1980年代のハードシーケンサーへのデータ入力[準備編][2021.11.30]
 ■授業紹介:1980年代のハードシーケンサーへのデータ入力[実践編][2021.12.04]


その1に書きましたが、先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」の受講生は2017年度前期の開講から2024年度前期までで32名を数えます。授業名の通り「楽曲分析」「音楽制作」を行う学生が多く、今年度前期の受講生は以下のようなテーマでした。
(★のテーマの学生は現在、私の研究室に所属して新たな研究テーマに取り組んでいます)

 ★ボーカロイド楽曲「まにまに」は何故ヒットしたのか(3年生)
 ★ドラマ内における音楽とセリフの関係の分析:
  ①ドラマ『アンサング・シンデレラ』 ②ドラマ『silent』(3年生)
 ★木管五重奏への編曲:
  Valkyrie「Le temps des fleurs」【「あんさんぶるスターズ!!」より】(3年生)
 ■ヨルシカの楽曲分析とそれに基づく楽曲制作:
  ①「思想犯」【アルバム『盗作』より】 ②「嘘月」【EP『創作』より】(3年生)
 ■「オープンコードを用いたギター演奏において、コードトーンの高音域に
  一貫した押弦箇所が存在するコード進行」の歴史的変遷の調査(2年生)


そして、この後期に受講している3名の学生はいずれも、これまでとは一味違ったユニークなテーマを掲げています。現在取り組んでいる研究について学生たちにコメントしてもらいましたのでご紹介しましょう。


【Aさん】(2年生)

私は「病みカルチャーと音楽の関連性」について研究を行っています。

現在、Z世代の若者を中心に「病みカルチャー」が流行しています。これは、メンタルの不調や自己肯定感の低さをあえて表出させたサブカルチャーであり、ファンションやSNS上でのコミュニティなど様々な場面で波及しています。有名な例では「地雷系ファッション」「トー横界隈」が挙げられるでしょう。

病みカルチャーは音楽とも大きな関わりがあります。そして、これらの音楽には、カルチャー独自の特徴があるのではないかと私は考えました。

そこで、病みカルチャー内で流行している楽曲を調査し、これらの共通点の考察に取り組んでいます。このカルチャーは現在進行形で発展しているため、文献調査はもちろん、SNSを活用した情報収集も欠かせません。

今後の最終発表では、病みカルチャーに関連する音楽の特徴について結論づけ、音楽という視点から、若者のサブカルチャーが今後どのように発展していくのか考察したいと考えています。

日本の新しいサブカルチャーを深掘りする、意義のある研究にできるよう努めたいと思います。

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【Tさん】(1年生)

私は、自分自身がバレエを習っていた経験から「バレエ音楽と振付の関係性」についての研究に取り組んでいます。

バレエを完成させるには音楽と踊りの調和をとることが非常に重要です。そこで、音楽を体で表現するにはどのようなことが大切なのか、バレエ音楽の楽譜の解析や使用されている楽器の調査、また、振付に組み込まれている「パ」(ステップ)の種類や意味を考え、それらを照らし合わせて分析を行います。

今回は「『コッペリア』第1幕よりスワニルダのバリエーション」を研究対象としています。

この研究を通して、踊りと音楽の調和のとり方を考え、振り付けに込められた意味を理解することで表現力の向上につなげると共に、自分自身も楽しく、より美しく踊ることができると考えています。

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【Mさん】(1年生)

私は今回、SQUARE ENIXが手掛けたゲーム『NieR:Automata』のフィールドBGMである『遊園施設』の楽曲分析を行っています。このタイトルは大学でゲームサウンドを学びたいと思ったきっかけでもあり、毎日四苦八苦しつつ楽しく分析しています。

調査としては、インタビュー記事や感想記事などを読んで、制作面での楽曲意図を考察しました。現在はAIによるアプリケーションを使用して音源分離し、自身でスコアに起こして曲構成を分析するなど、様々な側面からの調査を行っています。

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当講義を共に受講する仲間たちや先生からの質問やアドバイスも研究の良き刺激となっています。これから、この楽曲がゲーム作品にどのような影響をもたらしているのか紐解いていくのが楽しみです。

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今後、それぞれの研究がどのように展開していくか楽しみです。


(メディア学部:伊藤謙一郎)

2024年11月 8日 (金)

先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」(その2)

2024年11月 6日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」の紹介の第2回は「シンセサイザー体験」です。

皆さんは、シンセサイザー(synthesizer)を知っていますか? 実際に触れたことがなくても、名前を聞いたり実物を見たりしたことがある方は多いと思います。音楽制作や楽器演奏を趣味にしている方は、ソフトシンセサイザーやハードの機材を持っているかもしれませんね。

では、シンセサイザーの語源はご存知でしょうか?

これは英語のsynthesize(合成する)が元になっています。ですから、シンセサイザーは「音(音色)を電子的に合成して作る楽器」と言えるでしょう。

シンセサイザーの中には、ピアノや弦楽器、管楽器、もちろんシンセサイザーならではの電子的な音も含めて、あらかじめ用意(プリセット)されているものもあります。

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 楽器のカテゴリを選ぶダイヤル部分    カテゴリ内の多様な音色が選べます    プリセット型は外観が比較的シンプル

ですから、プリセットボタンやダイヤルを回せばすぐに「いろいろな音が出る楽器」と思われがちですが、本来は「ユーザーが自ら音を作る楽器」なのです。
(もちろん、プリセット機能のあるシンセサイザーも、プリセット音のエディットやゼロの状態から音の作成が可能です)

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 ツマミやスイッチを動かして音作り   VCFの設定で音色が大きく変化します    作った音を記憶して呼び出せます

こうしたシンセサイザーの原点に立ち返り、先週の授業では学生たちがアナログシンセサイザーでの音作りを体験しました。

どの学生もアナログシンセサイザーに触れるのは初めてということで、まず最初に音作りの基本原理(VCO, VCF, VCA)を説明しました。しかし、イメージした音を初心者が作るのは、やはり難しいので、製品マニュアルに掲載されているセッティングチャート(その音色を作るためのツマミの位置や配線方法を指示したイラスト)を見ながら音作りを行いました。

このセッティングチャートには、「トランペット」「ヴァイオリン」「オルガン」「ベース」「ハイハット」などの楽器音のほか、「サイレン」「嵐」「光線銃」「流れ星」といった音の作り方が書かれています。実際の「流れ星」に音はありませんが、セッティングチャート通りに作って聴いたところ、全員揃って「なるほど〜」と納得の声を上げました。
(昔のアニメのシーンで耳にするような効果音です。イメージできますか?)

今回使用したシンセサイザーは、コルグ「MS-20 mini」シーケンシャルサーキット「Prophet-5(ver.3.3)」ローランド「JUPITER-4」の3台です。いずれもたくさんのツマミやスイッチがあり、それらを動かすときの感触も新鮮だったようです。
(これら3台は、そっくりに作られたソフトウェアシンセサイザーもあります)

以下の写真はその時の様子です。(音をお聞かせできないのが残念です…)


【MS-20 mini】
(1978年に発売された「MS-20」の復刻版です。モノフォニックなので和音は出ません。本体右側に配置された端子どうしをパッチケーブルで接続すると、より複雑な音色を作成できます)

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セッティングチャートを見ながら音作り   パッチケーブルを繋いでいるところ     ちょっとした加減で音色が大きく変化


【Prophet-5(ver.3.3)】
(1978年から1984年にかけて製造され、ver.3.3はその最終型です。2020年からはver.4が販売されています。5音ポリフォニックで、ver.3.3は作成した音色の記憶数が40から120に拡張されています)

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黒のパネルと天然木を組み合わせた本体  機材の状態が悪く、この日はここで断念…


【Jupiter-4】
(1978年に発売された4音ポリフォニックで8つの音色を記憶できるシンセサイザーです。自動アルペジオ機能が搭載されています)

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 横一列に配置された扱い易いツマミ類    音色が大きく変わるVCFの数値を調整中   VCAで音の立ち上がりと持続を設定



最後に、学生たちの感想をご紹介します。


【Aさん】(2年生)
それぞれの機種によって音の特徴が大きく異なっていたことが興味深かったです。
例えば、管楽器を模した音作りをした際、どの機種も同じ音が出るわけではないのです。無限大の音が作り出せる一方で、機種によって音の「クセ」があるからこそ、シンセサイザーの音作りはより奥深いものになり、より音作りの可能性が広がるのではないかと思いました。


【Tさん】(1年生)
つまみの役割などを考えながらシンセサイザーをしっかり触ることは初めてでしたが、音源となるものによって音階がつかないものもあり、実際に考えながら触ってみることで新たな発見ができて非常に面白かったです。一つの音を作るにも多くの工夫がされていて音作りの奥深さを感じました。
さらに、この機械一つで無限の音色が出るということに魅力を感じました。Prophet-5、Jupiter-4はMS-20 miniとはまた違い、ケーブルがなく、つまみやスイッチだけで非常に多くの変化があって驚きました。今はパソコンを少しいじればどんな音色も作れますが、当時はつまみの微妙な違いで音色に変化をつけていたと考えると感慨深いです。


【Mさん】(1年生)
実際につまみを回したり、スライドさせることで音が変化するので、音を作っているという実感が得られました。つまみの特性を知ることで、音の可能性が無限に広がるのがとても興味深かったです。



この授業では、今後もさまざまな体験の場を設けていきます。


(メディア学部:伊藤謙一郎)

2024年11月 6日 (水)

先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」(その1)

2024年11月 4日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部の伊藤謙一郎です。

本日から3回にわたって、先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」についてご紹介します。

先端メディア学(1年次後期・2年次前期)は2016年に、先端メディアゼミナール(2年次後期・3年次前期)は2017年にスタートした少人数のゼミ形式の科目です。2024年度は、17名の教員がそれぞれ専門とする分野での研究指導や制作指導を行なっています。先端メディア学・ゼミナールの概要はこちらをご覧ください。

私は2017年度前期に先端メディア学を開講し、今年で8年目となりました。これまで32名が受講し、うち18名が私の卒業研究「ミュージック・アナリシス&クリエイション」に進んでいます。さらに大学院に進学して専門的な研究に取り組む学生も6名おり(現在1名在籍)、その中には1年次後期から3年次前期まで全て受講した学生もいます。音楽に特に強い興味をもつ学生が集まり、自身の研究テーマだけでなく音楽に関する話題について学生たちが自由にディスカッションする雰囲気が私自身とても好きですし、そうした中で学生から学ぶこともあってとても刺激的な時間です。

毎回の「学生の研究進捗報告」「音楽関連の映像資料視聴(または音楽鑑賞)」のほか、たまに「体験コーナー」なるものを設けることもあります。科目名の「先端」にとらわれず、最新の物事だけでなく、それらが歴史的にどのようなプロセスを経て現在に至ったかを実体験を通して考えることで、今日の音楽表現やテクノロジーを新たな視点で捉えることができるでしょう。

例えば「カセットテープ」。CDの出現によって姿を消しつつあったレコードが数年前に再び流行し、アーティストが新譜をサブスクやCDだけでなくレコードでもリリースしたことで話題となりましたが、最近はカセットテープでもリリースされるものもあります。10代、20代の若い皆さんは、「カセットテープ」という名前を聞いたことはあっても実際にその音を耳にしたことがある方は少ないのではないでしょうか。好きなアーティストのカセットテープを買ったとしても、それを聴くための機材や環境がないと難しいですよね。

ちなみに私の自宅ではカセットデッキが今でも現役で、中学から大学にかけてエアチェック(ラジオ番組などを生テープに録音することで、タイヤの空気圧のチェックではありません)したカセットテープが700本ほどあります。写真はその機材とカセットテープの一部です。
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私の研究室にもカセットデッキがあり、この機材はカセットテープブームが起こるより前に購入したものです。
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先日の第4回(10月17日)の授業では、この「カセットテープ」を取り上げ、カセットテープに録音された音を実際に学生たちに聴いてもらいました。聴いたのは、小林克也さんがDJを務める『渡辺貞夫 マイ・ディア・ライフ』というラジオ番組で、1985年1月5日(土)に放送された『最新ピットイン・ライヴ1』から「ランデヴー」という曲です。(※ライヴハウス「六本木ピットイン」は今から20年前の2004年7月に閉店しています)

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学生たちは一様に「すごく音が良い!」と驚いていました。演奏だけでなくライヴ会場全体の音も収録されていて、まるで会場の中にいるような臨場感を味わったようです(その音をブログでお伝えできないのが残念です)。生まれて初めてカセットテープを手にした学生もいて、このようなアナログなものから厚みのある豊かな響きがすることにびっくりしていました。渡辺貞夫さん(今年で御年91歳!)の温かなサックスの音色にも感動したようです。

上の写真を見ての通り、カセットのインデックスは「週間FM」というFM雑誌のもの、そしてエアチェック情報は全て手書きです(高校1年生のときの字)。こうしたカセットテープが今も700本近くあり、どれも思い出があって捨てられずにいます。
(最近、カセットテープが再び増えてきたので保管用の木製ラックを新たに入手しました)

次回は「シンセサイザー体験」をご紹介します。


(メディア学部:伊藤謙一郎)

2024年11月 4日 (月)

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