AIと数学(Mathematics)
2024年9月20日 (金) 投稿者: メディア社会コース
前回の記事において、AIを下支えする統計学の重要性について述べました。しかし、実はさらにその統計学を下支えする学問として数学の存在があります。とりわけ、確率論・線形代数・微積分学は大きく関係します。
確率論は、17世紀初頭のヨーロッパにおける賭け事の分析に端を発する応用数学です。ちょっとした遊び心から始まったのです。ある程度万人が納得する“数学的確からしさ”(例えば1回のコイン投げであれば表と裏の出やすさはそれぞれ1/2)を設定することで、様々な事象を[0,1]区間(0以上1以下の実数値の集合)で評価します。そして、統計学はこの確率的な考え方を、過去に蓄積されたデータに基づく“経験的確からしさ”をもとに、将来予測や推論に用いる学問と言えます。前回の記事で、AIの技術基盤がビッグデータとディープラーニングにあるとお話ししましたが、どことなく納得できますよね。
続く線形代数と微積分学は、大学の教養数学の二頭です。まず線形代数ですが、表現レベルではベクトルや行列などを扱うので、ビッグデータとの相性がよいのは想像に難くないと思います。統計分野では、多様な指標間の共分散の算出や分散分析、データ縮減の主成分分析、固有値計算などに応用されています。そう考えると、線形代数のAI支援に期待が高まるのは理解できますね。
最後に微積分学ですが、連続性や微分可能性(滑らかさ)をある程度前提として展開する数学の学問です。それゆえ、離散世界(0-1世界)を舞台とするAIとは相性がよくないように感じられるかもしれません。ただ、現代情報社会の高性能のコンピュータは、私たち人間に違和感がないようにデータを丸めて(連続的に見せて)様々な処理をしています。AIはリクエストに対して最適解を提案することを行います。一例ですが、偏微分に基づく最小2乗法は、線形代数と相まって機能するAIを支援する有用な考え方です。
文責: メディア学部 松永
(2024.09.20)
2024年9月20日 (金)