技術

CG画像作成処理の最終段階「トーンマッピング」

2022年11月10日 (木) 投稿者: メディア技術コース

 2年次後期の講義科目「CG数理の基礎」では、コンピュータグラフィックス(CG)技術を学ぶ基礎となる概念を勉強します。基礎なので、3次元CGの話題は少ししか出てきません。
 
 第7回授業「ディジタルカメラモデルと投影変換」はその数少ない3次元CGの話題です。授業冒頭では、3次元CGの処理(1枚のCG画像を作成する処理)は写真撮影手順と類似点があることを説明しました。以下のスライドです。
 Cg_20221118120301

 この授業では事前に資料を公開し、履修生から質問を受け付けて、授業中にはそれらを紹介し回答します。ここのスライドでは3つの質問がありましたので私の回答とともに紹介します。
 
 【質問】
 
 屋外なら太陽があり、室内ならライトがあるように、写真を撮るときに元から光源がある場合が多いと思います。その場合、光源に合わせてカメラの位置や向きなどを調整するため、手順2と手順3の順序が入れ替わると考えました。そこで質問なのですが、三次元CGにおいて、1~5の手順の順番が前後することはあるのでしょうか?
 
 【回答】
 
 質問の答えはYesです。前半でおっしゃる通り、場合により2と3は入れ替わることがあるでしょう。
 
 状況によっては1のうち「モデルの配置」もその順番の前後に入ってくるでしょう。
 
 ただし、4と5はそのままですし、1のうちの「モデルをつくる」もやはり一番最初です。
 
 【質問】
 
 カメラを設定してから光源を用意するのはどういった意図によるものなのでしょうか。先に設定したカメラの画角の中で、被写体が特に綺麗に写る位置に光源を配置するためでしょうか。
 
 【回答】
 
 一つ前の質問でもあるとおり、カメラの設定と光源の用意は場合により順番は変わります。実写の話で説明すると、カメラ設定が先で光源設定が次、というのはスタジオでの写真撮影を想定した場合です。
 
 自然光での撮影や照明条件が固定の室内だと、光源が先でカメラが次、ということになります。
 
 屋外の撮影であっても、人間の被写体にレフ版で光を当てる場合はカメラが先で光源が次、と言えそうです。これは質問の後半でおっしゃっているケースですね。
 
 【質問】
 
 5番の画像の調整の際にはどのような処理を行うのですか。
 
 【回答】
 
 あまり難しい話ではなく、意図通りの画像になるように明るさやコントラストの調整処理を行います。具体的な技術は次回授業で紹介します。
 
 より発展したトピックとしては「トーンマッピング」が、CGの処理の最終段階での画像の調整処理です。
 
 本講義では触れませんが、特に実写のような現実感のあるCGの描画処理で使われる技法です。各画素の輝度を計算する途中は実数計算を行います。輝度の値の範囲は0から数万あるいは数億にもなります。
 
 このような画像はHDR(High Dynamic Range)画像と呼ばれます。ただし、最終的なCG出力画像は輝度がRGBそれぞれ[0,255]の範囲(LDR, Low Dynamic Range)に収まる必要があります。
 
 最終段階では必ずHDRをLDRに変換する必要があるのです。このときの処理がトーンマッピングです。明るさやコントラストの調整はもちろんなのですが、どの部分がより細部まで見えるようにするかの調整がトーンマッピングの設定では必要です。
 
 もちろん設定内容によっては、明るすぎて真っ白に見えてしまう部分(白トビ)や暗すぎて真っ黒に見えてしまう部分(黒ツブレ)ができてしまいます。それは仕方ないことですし結果的に現実味のある画像ができます。
 
 欲張って画面全体がなるべく細部までわかるようにトーンマッピングを設定すると、全体的にコントラストが弱く平板でメリハリのない印象を与える画像になってしまいます。
 
 【質問回答は以上】
 
 最後の回答で説明したHDR画像に対するトーンマッピングの例を紹介しましょう。
 Photo_20221118120401  
 「CG数理の基礎」としては発展トピックですが、実は「メディアのための物理」という別科目の教科書で紹介しています。この教科書から抜粋しました。右の図(b)が画面全体が見やすくなるように処理した結果です。画像を区分けした部分画像ごとに異なるトーンマッピングを施しています。

参考書籍:
大淵, 柿本, 椿, 「メディアのための物理 ーコンテンツ制作に使える理論と実践ー」, コロナ社, 2022年4月.

メディア学部 柿本正憲

2022年11月10日 (木)

メディア専門演習「ネットワーク構築」の紹介

2022年11月 9日 (水) 投稿者: メディア技術コース

皆さん、こんにちは。

今回は私の担当しているメディア専門演習「ネットワーク構築」について紹介します。インターネットはすでにインフラになっていて、皆さんもスマートフォンやPCを使って毎日利用していると思います。すでに「利用している」という意識もないかもしれません。インターネットの仕組みは講義でも学修しますが、実際にどうなってるの?というのはなかなか体験的に理解する機会がありません。そこでこの演習では、実際に本格的なルーターなどのネットワーク機器を用いて演習室内でネットワークを作ります。演習室内でインターネットを再現することはできませんので、実際には小規模なLANをいくつか作って相互につなぐなどの演習を通して理解を深めます。

演習は個人作業とグループ作業の両方があります。初回には演習室PCの外付けSSDへLinuxをインストールし、演習ではLinuxを利用します。

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写真はグループ作業が始まって2回目の時の演習の様子です。細長い机の上にある大きな薄い箱がルーターです。このころはまだ、分担して進めていてもお互いに自分のやることが完全には理解できていないため、なかなかうまく動きません。理論的な理解の差が手順や設定の差となっても現れトラブルが続出しますが、回を重ねるごとに分担を入れ替えることでメンバー全員の理解が深まり共通的になっていきます。そして、自分たちでトラブルシューティング(問題の原因発見と解決)ができるようになっていきます。

演習も後半に入り今後はVLANなどの技術も入ってくることで複雑さを増しますが、わかると面白い!と思ってもらえる演習にしていきたいと思います。

(メディア学部 寺澤卓也)

2022年11月 9日 (水)

最先端のARやVRの制作の前に②エイゼンシュテインのモンタージュ理論

2022年10月18日 (火) 投稿者: メディア技術コース

新しいメディア学の研究テーマに取り組んでいる全国唯一の健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。人体を健康メディアとしてとらえメディアを活用して自らの健康をデザインしたり、多くの人たちに役立つ健康改善するための健康アプリを制作するための研究を行っている研究室です。

最近、プロジェクションマッピングやAR・VRの活用において多数のCG映像作品を見ることが増えてきました。そこで今回はその際に役に立つ映像テクニックあるいは心理学的効果として、前回のクレショフ効果につづき、最も有名なモンタージュについて紹介します。

モンタージュとは、日本の警察が犯人捜しで、目撃者がモンタージュ写真を選んでいくシーンがあまりに有名ですが、映画の世界ではちょっと意味合いが違います。今回はその中でもエンゼンシュテインのモンタージュ理論についての話題です。

Wikipediaによると
モンタージュ(montage)は、映画用語で、視点の異なる複数のカットを組み合わせて用いる技法のこと。元々はフランス語で「(機械の)組み立て」という意味。映像編集の基礎であるため、編集と同義で使われることも多い。

フィルムのつなぎ合わせが独自の意味をもたらすことは、映画の創成期から知られていた。たとえば米国エジソン社の『メアリー女王の処刑 (The Execution of Mary Stuart) 』(1895)では、撮影途中でわざとカメラを停止する「中止め」を用いて、首がギロチンで落ちるショッキングな演出を行った。また、映画の魔術師と呼ばれるメリエスは、編集によってさまざまな映像的トリックを試みただけでなく、『月世界旅行(Le voyage dans la Lune)』(1902)の最後のシーンでは「コマ撮り」のアニメーションを実現している。

この後のモンタージュ技法は、純丘曜彰によれば、大きく2つの方向へ分岐するとされる。一方はソ連の映画監督セルゲイ・エイゼンシュテインに代表されるエイゼンシュテイン・モンタージュであり、他方は米国の映画監督D・W・グリフィスに代表されるグリフィス・モンタージュである。

エイゼンシュテイン・モンタージュは、当時流行し始めたソシュールの構造主義の影響を受け、台本の言語的要素を映像に置き換えて編集していく手法であり、エイゼンシュテインの映画『戦艦ポチョムキン(1925年)』の「オデッサの階段」がその典型とされる。

Potemkinstairs

この現在ウクライナにあるオデッサ(オデーサ)の階段は、当時ソビエト連邦にはポチョムキンの階段と呼ばれ、今でも戦争中な場所で今現在このままであるかどうかはわかりません。

この映画史上最も有名なポチョムキンの階段シーン(オデッサの階段、1925Movie, Russia)についてのさらに詳しくした解説が以下になります。
https://kokai.jp/escalera-de-odesa/
ウクライナのオデーサ(オデッサ)にある長さ142mの「ポチョムキンの階段」を舞台とした、世界の映画史上最も有名な6分間シーンです。ソビエト連邦の映画監督セルゲイ・エイゼンシュテイン(ロシア語:Серге́й Миха́йлович Эйзенште́йн Sergéj Michájlovič Ėjzenštéjn, Sergei Mikhailovich Eisenstein)により、1925年に製作・公開された名作映画「戦艦ポチョムキン」のオデーサ市民に対する虐殺シーンです。エイゼンシュテイン監督は映画「戦艦ポチョムキン」で、有名な映像編集の基礎「モンタージュ理論」を確立させています。

モンタージュ理論を確立できたのは、セルゲイ・エイゼンシュテイン氏が一時期、日本人教師に漢字を習っていたからだという説があります。漢字という象形文字の持つ抽象的な概念をデザイン描写的に表現しているという基本コンセプトから、「身」と「美」で「躾」とか「口」と「鳥」で「鳴」になる等、全く別の意味になるという事に興味を持ち、このコンセプトを基にモンタージュ理論を確立したということです。

エイゼンシュテイン、プドフキン、グリゴーリ・アレクサンドロフの共同署名による「トーキー映画の未来(計画書)」(「トーキー宣言」)に、「モンタージュ」についてこう書かれています。

現代の映画は視覚的映像を操作することで、人間に強力に働きかける。当然ながら、その力はさまざまな芸術のなかでも首位の座を占めるものの一つである。映画にこのような強力な働きかけの力をあたえている基本的で唯一の手段は、明らかにモンタージュである。

モンタージュこそ働きかけの主要な手段であるという主張は、疑問の余地のない公理となっており、世界映画文化の磁石となっている。ソヴィエト映画が世界のスクリーンで収めた成功のほとんどは、ソヴィエト映画がはじめて発見し、確立した数多くのモンタージュ手法によるものである。だから、映画をより一層発展させる重要な要素は、観客に働きかけるモンタージュ手法を強化し、拡大することだけである。
山田和夫「エイゼンシュテイン」より


ここでの気づきで象形文字である「身」と「美」からそれぞれの意味を融合したり統合したり超越した意味である「躾」(しつけ)が出来上がることろが興味深いです。「口」と「鳥」で「鳴」となるのも興味深いですね。そして日本にはこのかな混じり漢字を使った俳句や短歌があります。これについても次回以降に紹介したいと思います。

さらにこのように映像のカットを巧妙に組み合わせることで極めて強い印象を視聴者に与えることができる、ということも興味深いです。そしてこのエンゼンシュテインのモンタージュ理論は時代の別の違った利用法をされていきます。これについても次回以降に!


2022年10月18日 (火)

最先端のARやVRの制作の前に①クレショフ効果

2022年10月17日 (月) 投稿者: メディア技術コース

新しいメディア学の研究テーマに取り組んでいる全国唯一の健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。人体を健康メディアとしてとらえメディアを活用して自らの健康をデザインしたり、多くの人たちに役立つ健康改善するための健康アプリを制作するための研究を行っている研究室です。

最近、プロジェクションマッピングやAR・VRの活用において多数のCG映像作品を見ることが増えてきました。そこで今回はその際に役に立つ映像テクニックあるいは心理学的効果として有名なクレショフ効果について紹介します。

Wikipediaによると、
「クレショフ効果」とは、映像群がモンタージュされ、映像の前後が変化することによって生じる意味や解釈の変化のことをいう。一般に映像の意味や解釈は、ほかの映像とのつながりのなかで相対的に決定されていく。本効果は、映画的な説話論の基礎である。

実験として、本効果のもつ意味論的伝染を強調するために、レフ・クレショフは、科学的経験(認知心理学)を開発した。クレショフは、ロシアの俳優イワン・モジューヒンのクローズアップのカットを選び、とくに無表情のものを選んだ。モジューヒンのカットを3つ用意し、3つの異なる映像を前に置いた。

第1のモンタージュでは、モジューヒンのカットの前に、スープ皿のクローズアップを置いた。 第2のモンタージュでは、スープ皿のかわりに、棺の中の遺体を置いた。 第3のモンタージュでは、棺の中の遺体のかわりに、ソファに横たわる女性を置いた。それぞれのシーケンスを見た後で、俳優(モジューヒン)があらわす感情を観客は述べなければならなかった。その結果、観客は、第1では空腹を感じ、第2では悲しみを感じ、第3では欲望を感じたと答えたのである。

とあります。実写映像出身者はこのクレショフ効果をきちんと学修していて、このをクレショフ効果をしっかりと活かしたカット割りを制作に取り入れています。端的に伝えたい意図を明確に鑑賞者に与えることができ、ナレーション不要です。これは言語不要とも言い換えることができます。つまり世界に通じる映像制作手法であると言えます。

このクレショフ効果を活かした作品制作は万能なので、知っているとより効果的な映像作品を制作できますね。

2022年10月17日 (月)

卒業生の執筆した記事がゲームメーカーズで公開

2022年10月16日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

助教の戀津です。
今回は卒業生の活躍と、おすすめの記事についてご紹介です。

ゲームメーカーズというサイトをご存知でしょうか?
名前の通り、ゲーム制作者やゲーム作りを志す方々のための情報発信メディアで、ゲーム制作のチュートリアルや技術系の記事など多彩なコンテンツを取り扱っています。
実はそのゲームメーカーズの編集長である神山大輝さんは、本学メディア学部及び大学院の卒業生です。

卒業後は音楽制作に向けたレコーディング機器の販売・コンサルティングに従事し、サイドワークとしてゲームに向けた楽曲提供を行っていました。
独立後は音楽事業のほか本学での演習講師も務めていただき、また開発ワークフローや各種DCCツールの知見があったことからテクニカル系の記事執筆業務に従事、2022年5月にゲームメーカーズの立ち上げをしています。

そして今回、CEDECの講演の一つについてまとめた『ダークファンタジーの空気感を描く、『ELDEN RING』の大気表現【CEDEC2022】』という記事が公開されました。
これを執筆されたのが、本学大学院で博士号(メディアサイエンス)を取得された竹内亮太さんです。
元々3DCGプログラムが専門で分野への造詣も深く、またそれを正しくわかりやすく説明する確かな文章力で素晴らしい記事を執筆されました。
注目記事ランキングでも第一位となったようです。

記事中に出てくる用語は3DCGや画像処理技術などの専門的なものが多く、難しい印象を受けるかもしれません。
しかし、紹介されている各種技術が作品創りにどのように活かされているか、工夫のしどころやその肝がどこであるかの解説が非常にしっかりしており、技術の理解を一段と深めてくれる形になっています。
多くの物事でそうですが、技術は技術そのものの説明を見るよりも、それをどのように使うのか、どう使えるから素晴らしいのかが理解できると技術自体への理解も大きく深まります。

技術についてよく知らない方は学習のとっかかりに、ある程度理解している方はその実用事例の参考にと、様々な理解度の方にお勧めの大変よい記事です。
本学のゲーム制作を志す皆様も是非参考にしていただければと思います。

2022年10月16日 (日)

「CG数理の基礎」を刊行(ソースコード付)

2022年9月28日 (水) 投稿者: メディア技術コース

 メディア学部の柿本です。今日の記事は宣伝です。
 
 「CG数理の基礎」という2年次後期の講義を担当しています。この夏、この講義内容を収めた同名の教科書(コロナ社「CG数理の基礎」)を刊行しました。
 
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 昨日の記事でも示しましたが、この講義では資料を事前公開し、履修生からの質問を授業前に集めています。授業当日には準備した回答とともに紹介しています。
 
 事前質問により、学生が陥りやすい誤解やそもそもの前提が理解されていないことなどがしばしば明るみになります。講義をする側にとっては当たり前のことで説明をしないで済ませてしまうような事項です。このようなことに気づくことができるのは、教員としては貴重な経験になります。
 
 授業中に質問を募っても、素朴な質問やそもそもの前提があやふやな質問はなかなか発言しにくいのは学生としては当然のことです。事前提出してもらうことで掘りだせる質問には知識や概念の幅を拡げる興味深いものが多く、勉強する側にとっても効果的です。
 
 今回刊行した「CG数理の基礎」はこれまでの学生からの質問疑問も加味して、説明する各技術について、そもそもの前提やなぜそうなっているのかの背景などもなるべくていねいに解説しました。
 
 また、題名のとおり基礎技術に焦点を絞りました。CG技術というと、美しいCG映像のための各種の華やかな技術が注目されがちですが、この本はその辺の内容は思い切って対象外にしました。そのような技術は断片的にWebで調べれば多くの記事から情報を得ることができます。
 
 ところが、そういう記事を正しく理解するための大前提となる基礎は意外とWeb上での解説はあまりありません。もちろん断片的にはありますが、基礎を知りたい人にとってどの断片が重要なのかはWebだけ見ていてはわからないものです。
 
 「CG数理の基礎」ではこの分野の常識となっている技術知識を体系的に学ぶことができます。10年後、20年後になっても基礎として残っている技術ばかりを収めています。学生の皆さんが社会で活躍するようになったときでも役立つことを約束します。
 
 CGを学ぶ学生だけでなく、技術、制作も含めてCGに関わる若手の社会人にも知っておいてほしい内容の本になりました。また、高校の情報の授業で画像やCGに興味を持った人にもぜひ手にしてもらえると深掘りした学びができます。
 
 出版社のサイトからは、この書籍で紹介した技術の一部を実装したサンプルプログラムをソースコード付でダウンロードできます。書籍中の図の多くを作成したプログラムも含まれており、全部で40種類以上のソースコードを試すことができます。
 
メディア学部 柿本正憲



2022年9月28日 (水)

脈拍と心拍数と運動強度

2022年9月 6日 (火) 投稿者: メディア技術コース

新しいメディア学の研究テーマに取り組んでいる健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。人体を健康メディアとしてとらえメディアを活用して自らの健康をデザインするための研究を行っている研究室です。

今回は健康メディア研究室のテーマに関連する話題です。NHK総合で2022年9月1日19:57~20:42に放送された「あしたが変わるトリセツショー」では脈拍(心拍)がフォーカスされていて、以下のように番組内容が放送されました。

【トリセツ01 自分の脈拍を知って 未来のリスクを把握しよう】
■安静時脈拍が80超えだと・・・将来太るかも!? 自分の1分間の脈拍(心拍数)、把握していますか?近年、脈拍の値が高い人は、将来さまざまな病気になる可能性が高いことがわかってきました。(低すぎてもリスクになります)久留米大学が行った研究では、安静時の脈拍が80以上だと、将来肥満になるリスクが約2倍になったという結果が出ています。世界の研究者が大注目する「脈拍」☆脈が速いと将来肥満になるリスクが倍に!?☆ストレス解消に睡眠改善まで!脈下げヨガを大公開☆日々の脈拍で自律神経の状態を知ろう!

皆さんは、自分の脈拍数(心拍数)をご存じでしょうか?通常は朝起きた時が最低の心拍数で、日中の生活では運動量に応じて高くなったりします。また緊張すると心拍数が高くなったり、ぬるいお風呂でゆっくり入浴すると心拍数が下がったりします。

今回は、この自分の意志でコントロールすることが難しい心拍数について3つのトピックを紹介したいと思います。まず最初は安静時心拍数です。人間はリラックスすると心拍数が低下し、睡眠時の起床前が通常一番低い値になっています。この値を安静時心拍数と呼びます。心配事があって眠りが浅かったり、お酒を飲みすぎて熟睡できないときはこの値が通常ほどは低くなりません。若干の緊張状態にあるとも言いえます。

2つ目は最高心拍数です。人間は全力で運動していてもそれ以上に心拍数が高くならない値が存在します。考え方を変えれば、人間の身体が壊れる前に、それ以上の値にならないようにセーブしているとも言えます。通常は 最高心拍数 = 220 - 年齢 で概算できます。つまり、20歳の人はどんなに運動しても、心拍数は200以上にはならないということです。

そして3つめは、上記の2つの安静時心拍数と最高心拍数が決まれば、その人の心拍からみた運動に対する負荷を知ることができます。これを運動強度と呼びます。心拍数から運動強度を求める方法として、カルボーネンの式があり、運動強度(%) =(運動時心拍数-安静時心拍数)÷(最大心拍数-安静時心拍数)×100(%)
で求めることができます。

運動は運動強度が50%を上回った位置から、非常に軽い運動(50~60%)、軽い運動(60~70%)、普通の運動(70~80%)、きつい運動(80~90%)、最高にきつい運動(90~100%)、と運動の強さを5段階で定義できます。この運動強度を使用すれば、人によって値が大きく異なる心拍数によらず、その人にとっての運動の強度を数値化することができます。スポーツやジムにおけるトレーニング方法でよく使用されています。

以前は、トレーニング中に一旦停止して心拍数を測る必要がありましたが、スマートウォッチが普及した今、トレーニングを中断することなくリアルタイムに心拍数を計測することができます。便利になりましたね。

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2022年9月 6日 (火)

運動不足の人に役立つ健康アプリ企画をペルソナ的に考える

2022年6月19日 (日) 投稿者: メディア技術コース

新しいメディア学の研究テーマに取り組んでいる健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。人体を健康メディアとしてとらえメディアを活用して自らの健康をデザインするための研究を行っている研究室です。

今回はメディア学部2年生後期・3年生前期に実施しているメディア専門演習I/IIの健康メディアと地域メディアの企画デザインという演習の1コマを紹介したいと思います。この演習では、
①アプリのコンセプトデザイン評価方法
②figmaを使用したアプリデザインの学修
③既存アプリの調査
④既存アプリの改善案デザイン
⑤ペルソナを想定した新アプリ企画
⑥新アプリのfigmaによるデザイン
の6段階でアプリの企画法を学びます。そして、漠然とアプリデザインを学ぶのでなく、最近注目されている健康アプリおよび地域アプリを対象としたアプリデザインを企画・制作していきます。

6月末の今の時期は⑤の段階に入っています。新しいアプリ企画を考える際に皆さんはどのようなプロセスで組み立てていけばよいと思いますか?「ひらめき」、、、大切ですよね。でも「ひらめき」だけに頼っていては、「ひらめき」が起こらない場合、つまりひらめかない場合に困ります。企業の場合は新企画ができないわけですから、予算は計上しても開発ができないことになります。

とすると他には上記の④で学修した既存のアプリの改善というアプローチもあります。これも悪くないですが、単に類似アプリであったとしたら敢えてこれから新企画するアプリを使用してもらうという動機付けが弱いですよね。

そこで新しいアプローチが必要になってきます。従来はより多くの人に共通的な機能を提供すれば、ターゲットとする多くの人の一部が利用してくれたという結果になり、そこそこのユーザを獲得することができました。特に日本の場合は村社会でかなり画一的であったためこのような方法論が成功の秘訣でした。

しかし今は個の時代です。つまりたくさん人はいるけど、それぞれが個性的でライフスタイルも趣味嗜好も異なるということです。このような環境の人々に、従来のより多くの人に使ってもらうアプリ企画ができるでしょうか?全員にとって少しは役に立つけど、敢えて利用するほどではないということになります。

そこで登場するのが「ペルソナ」(https://prtimes.jp/magazine/persona/)です。

「ペルソナ」は、マーケティングの分野で頻出する単語ですが、混同されることの多いターゲットとペルソナとは本質的に違います。

ペルソナは「人格(Persona)」の意味を持つラテン語です。元は、俳優が演技をする際に役の仮面をかぶることを指していましたが、そこから転じて人格や性格などを意味するようになったといわれています。

ターゲットは「実在する属性のそこそこの人数の集団」で、その集団に商品やサービスを提供することを目的とします。例えば、ターゲットでは「30代独身女性」と属性での括りになりますが、抽象的なので具体的なイメージを思い浮かべるほどには至りません。「休日はどうしているの?」ということを聞かれても具体的なイメージがわきませんし、10人に答えてもらうと10種類ほど出てきそうです。これではどのような仕様でどのようなデザインをしていこうかという際に、ヒントが少なすぎます。

一方、ペルソナは「架空の具体的かつ詳細な人物像」で、例えば、ペルソナでは「38歳男性、職業は食品メーカーの営業職。現在は八王子在住で、八王子の大学では経済学部でラグビー部に所属し、4年間で卒業し、26歳で大学のサークルのマネージャーと結婚し、9歳の息子がいる3人家族の夫」などと具体的かつ詳細に人物像を定めます。具体的な人物像なので、例えば記載の無い「休日はどうしているの?」ということを推定するとき、息子のサッカースクールのお手伝いとか応援かなとか、家族で高尾山にハイキングにいくのかな、とかなんとなく発想が広がっていきます。

実際に上記の演習でペルソナ設定を実践してもらうと、本人はペルソナを記載していたつもりで、実はターゲット設定のままで具体性が欠けていいるというケースは少なくありません。つまりペルソナとターゲットの違いを曖昧に捉えているからで、問題意識が低く、深掘りができておらず、自身が設定したアプリの利用者についての対象者設定が甘いということになります。

そしてペルソナが完成すると、その人物像が必要とするニーズを箇条書きにして仕様を決定し、その人物像を想像しながら優先順位を決めます。つまり十人十色(https://plaza.rakuten.co.jp/tensinotubuyaki/diary/200706040000/)な新アプリ企画になります。そしてデザインする際には、設定したペルソナに気に入ってもらえるように、十人十色的に色やフォントやイラスト・写真を用いてのデザインを構成していきます。

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2022年6月19日 (日)

ややこしい3次元座標系

2022年6月18日 (土) 投稿者: メディア技術コース

コンピュータ上で3次元を扱おうとする際に直面するハードルの一つが,3次元座標系です.

単純に「軸が3つある体系」,「2次元に比べ,軸がもう一つ増えている」など簡単に思うかも知れません.しかし,3次元座標系にはこの記述だけでは書き切れない複雑さが色々潜んでいます.あらゆる内容を全て書き下すと切りがないので,ここでは2つほど,困惑しがちな内容を挙げておきます.

 

(i) 3次元「回転」扱いの難しさ

3次元座標変換は,教科書的には4x4の行列で定義できるアフィン変換を用いて記述します.このアフィン変換を用いることで平行移動,回転,拡大縮小などが記述できます.その中で,最もややこしいのが回転変換です.一応,X,Y,Z軸に沿った回転角度の組み合わせで回転を記述するオイラー角という表記方法が最も直観的です.しかし,この表記方法には表記自体に曖昧性が存在します.また,回転順序によって結果が異なってきます.また,異なる表記でも同じ回転を表現したり,ジンバル・ロック現象と言った複雑な問題が起きます.こう言った問題がないように回転を記述する方法としては四元数というものがありますが,これの理論もかなり複雑なもので,容易に理解できるものではありません.

 

(ii) 異なる座標系間の「変換」

前述した回転の難しさはある意味よく知られている問題です.それに対して,こちらの内容はあまり広く知られていません.普段3次元座標系の必要なものを実装する際は,何かしら既存のライブラリを用いることが殆どです.しかし,ライブラリごとにこの3次元座標系の設定が異なっているのが悩みの種です.

3次元座標系における軸設定は3次元物体を記述するところ(モデル座標系)だけに用いられるのではなく,カメラにおける軸設定(カメラ座標系),描画ピクセルの並べ(スクリーン座標系)等における軸設定にも関わるものです.同じライブラリの中では,こういう変換に問題が起きないようになっている(はず)です.しかし,場合によっては軸設定の異なるライブラリの機能をそのまま使いたい場合がありますが,その変換の際に役立つデータの橋渡し方が用意されていない場合が多く,結局自前の試行錯誤で正しい変換のやり方を探すことが殆どです.なので,単純にあるライブラリAからライブラリBに繋げるのに,両者の変換を正しくさせるための変換を探すのに別途の時間を費やす必要があります.

 

今回は数式を極力用いず,具体例も挙げずに概略を説明したまでですが,今度からは実動するプログラムと数式と共にこの内容が説明できればなと思います.

2022年6月18日 (土)

モデリング研究に携わったきっかけ

2022年6月15日 (水) 投稿者: メディア技術コース

前回 (5月28日の投稿),自己紹介と今までやっていた研究の1つを紹介しましたが,今回は私の履歴をもう少し説明しつつ,現在の研究に至った経緯を説明したいと思います.

私は高校まで出身国である韓国で過ごしていて,学部過程から日本に渡ってきました.学部や修士までやってきたものは現在やっている研究とは関連性が薄いので,ここでは割愛させて頂きます.

修士過程を終えた2012年に,兵役のために韓国に帰国しました.韓国は兵役制度が実施されていて,一定年齢以上の男性は基本的に2年弱,兵士として義務を果たす必要があります.私はその代わり,大学や企業の研究所にて研究員として3年間勤める,代替服務で兵役を果たせました.勤務地はKAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology, 韓国科学技術研究院)という研究重心大学に付属されているAR(拡張現実間)の研究所でした.

そこで私が携わった研究は以下のようなものでした.
"An HMD-based Mixed Reality System for Avatar-Mediated Remote Collaboration with Bare-hand Interaction" 
Seung-Tak Noh, Hui-Shyong Yeo, and Woontack Woo,
In ICAT-EGVE 2015, Kyoto, Japan: The Eurographics Association, 2015, pp. 61-68, The Eurographics Association, 2015.
コンセプトを要約すれば,遠隔地にいる2人が,お互い相手をアバターの形で自身の空間に召喚させ,何かしら共同作業を行うとのコンセプト (動画 0:06~0:18) と,それを実現するためのシステム構築 (動画 2:50~) をまとめたものです.今となってはこのような概念は「メタバース」などの名前で括られ,一般にもよく知られている概念になってきたと思います.映画やコンセプト動画程度で現れていた概念だけのものであったので,それを先立て実現させてみたのに意義があったと言えます.

今度紹介した論文は一応,研究プロジェクトの一貫として作ったものです.なので,やはりあっちこっち満足の行かない部分が多かったです.その中でも,私として最も満足の行かなかったところは3次元モデルのアバター部分でした.基本的に,このプロジェクトで使うアバターは遠隔のユーザを表すものですが,そうするには顔,服装などのパーツを現実のユーザに似るようなものとして作り上げることが望ましいです.ですが,このような作業を3次元キャラクターモデルとして一貫性を保ちつつできるようにするのは案外簡単ではありませんでした.なので,当時のプロジェクトでは,3次元モデラーに依頼して作ってもらった3次元キャラクターものをそのまま利用した訳です.この辺りの問題を解決するには,その度にモデラーに依頼するような仕組みではなく,もっと技術的な解決策が必要と思い,CGのモデリングを研究することと決めた訳です.
また次の機会でKAISTにて行った他の研究や,博士課程以後行った研究も紹介できればなと思います.
よろしくお願いいたします.

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2022年6月15日 (水)

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