技術

ルールベースと生成AIを併用したTRPGゲームマスターのシステムを試作

2024年3月 6日 (水) 投稿者: メディア技術コース

皆さん、こんにちは。メディア技術コースの松吉です。

2024年2月29日と3月1日に開催された人工知能学会 言語・音声理解と対話処理研究会 第100回研究会という研究発表会で発表した研究について紹介します。本学大学院の三上・兼松研究室に所属する武田さんが以下の研究タイトルで外部発表してくれました。

テーブルトーク・ロールプレイングゲーム(TRPG)とは、物語のシナリオに従って、人間同士で会話を交わしながらRPGの冒険や戦闘を繰り広げていく、複数人参加型のゲームです。コントローラーのボタンをポチポチ押すのではなく、自由会話により物語が進んでいくことがTRPGのウリです。TRPGでは、参加者のうち1名が司会を務めます。この司会者はゲームマスターと呼ばれます。ゲームマスターは、事前にシナリオを読み込んで本番に備え、ゲーム本番ではルールブックを参照してルールに従ってTRPGを仕切ります。ゲームマスターは、プレイヤーたちと会話し、物語がうまく進行するように努めます。

テレビゲームやソーシャルゲームのRPGも楽しいですが、複数人で自由会話によりワイワイ遊べるTRPGもとても楽しいゲームです。動画配信サイトなどでTRPGのゲームプレイを見たことがある人も結構いるのではないかと思います。

TRPGを遊ぶうえで、ゲームマスターが不足しているという問題があります。武田さんは、この問題を解決することを目的に、コンピューターにTRPGのゲームマスターを担当させるという研究に取り組み、ゲームマスターのプログラムを試作しました。現在の生成AIは悪意なくハルシネーション(事実ではないこと)を出力してしまいます。ですので、「シナリオを元にルールに従って正確な発言を行う」仕組みと「生成AIを用いて自由度の高い応答を返す」仕組みの両方を採用したシステムとしました。システムの全体像を以下に示します (クリックで大きい画像が表示されます)。各部分を詳しく説明することはしませんが、プレイヤーの発言を自動解析し、それに基づいて図の左下のほうでゲームマスターの発言を自動生成しています。

Takedaai

実際に、コンピューターのゲームマスターシステムに仕切らせて、人間のプレイヤー3名にTRPGを遊んでもらうという評価実験を実施しました。複数人の自由会話によりゲームを進めていますので、構造が複雑でないシナリオでも、エンディングまで5~6回、ゲーム進行不能という状況が発生しました。ですが、事後のアンケートにおいて、プレイヤーから「親近感が湧いて遊びやすかった」、「プレイヤー間の会話にシステムがツッコミを入れてて楽しかった」などの好意的なコメントをもらうことができました。

まだまだ改善すべき点があり、人間のゲームマスターと比べると、うまくできないことが多いです。ですが、ゲーム進行の正確さと柔軟さを兼ね備えたシステムとして、及第点以上の「第1歩」になったのではないかと思います。

本学のメディア学部では、TRPGに限らず、広くゲームやゲームAI、ゲームストーリー等について研究している研究室が複数あります。これらに興味がある方はぜひメディア学部の各研究室の研究活動を調べてみてください。

 

(文責: 松吉俊)

 

2024年3月 6日 (水)

用語発明術の重要性

2024年2月16日 (金) 投稿者: メディア技術コース

 前回記事では、研究の過程や発表において、新たに考案した物事や概念に新しい名前を考えて付与することについて話しました。良い名前の条件も紹介しました。
 
 今日の記事では研究に限らず、専門性を含む活動全般でそのような「用語発明」が重要であることを話します。
 
 プログラミングはその典型的な活動です。少しでも経験したことのある人は分かると思いますが、プログラムを書くことは新しい名前を発明することの連続です。
 
 特定のデータを表すためには変数名を発明する必要があります。ある一つのまとまった処理の単位に対しては関数名を考案する必要があります。このときも前回紹介した良い名前の条件、特に(2)(具体的)(3)(そもそも何なのかの前提)(6)(誤解されない)がプログラミングにおいても重視されます。
 
 名前を付けるということは、当たり前ですがあとでその名称を使う場合があるということです。使われる状況としてさまざまな場面が想定されます。適切な名称であればその事物あるいは機能が何であるかすぐ理解できます。そうすると、その名称を使うプログラムを読むときに進行中の思考を円滑に展開できます。そのような名称を付けるのは簡単なようで意外と難しいです。
 
 一般に良い名前を付けるには時間をかけて考える必要があるということは前回記事でも言いました。プログラミングでも同じで、変数名一つ付けるのに半日かけるというようなことも珍しくないです。これはひとえに、後から名前を使う場面(自分以外の人が使うこともある)での思考の流れを妨げないためです。
 
 そこまで神経質にならなくてもよいのでは、と思うかもしれません。確かに、1回使えばいいだけのプログラムや行数の短いプログラムならそれでいいでしょう。でもどんどん機能追加して行数が長くなるプログラムでは、各種名称が適切であることは重要です。最初の命名時に時間をかけて熟慮する必要があります。
 
 そのほかにもプログラミングにおいて各種の名称を付けることがなぜ大事か、なぜ時間をかける必要があるか、学会誌の記事としてそのことを紹介しました。プログラミングをある程度行う人であればぜひ読んでみて欲しいです。
 
柿本正憲, 命名に時間をかけよう, 特集 フレッシュマンに向けたプログラミングのススメ, 情報処理, Vol.60, No.6, pp.494-497, June 2019
 
 冒頭で「専門性を含む活動全般で」用語発明が重要であることを話すと言いながら、プログラミングだけの話になりました。あと一回まったく別の事例をいずれ紹介します。

メディア学部 柿本正憲

2024年2月16日 (金)

プログラミング教育は本当に必要なくなったのか?

2023年12月11日 (月) 投稿者: メディア技術コース

昔からプログラミングは必要なのか,その教育も必要なのか的なお話をちらほら聞きます.特に,去年末(3.0)から今年の頭(3.5)に公開され,流行り始めたChatGPTがプログラミングコードも生成してくれるので,そのような意見が強まった気がします.しかし,本当にプログラミング教育は意味をなさなくなってきたものでしょうか?このことに対して,私が学部生であった2006年とその10年後の2016年の出来事を思い出したものです.

2006年は,ちょうどグーグル機械翻訳サービスが始まった時期です.どこの大学・学科でも学部生は必須で英語を必須科目として受講すると思いますが,ある日クラスメートが講師の先生に「機械翻訳が発達すれば,こんなに英語を勉強する必要があるのか」問いかけたものです.当時,留学1年も立たず日本語もそこまで流暢にしゃべれなかった私は使えるかと思って,あれこれ性能チェックをしたものでしたが,当時の機械翻訳の性能なんてそんなに使えるレベルのものではないのが分かっていたので,考慮する価値のないお話だと思っていました.しかし,それに対する先生の対応が素晴らしかったのだけは覚えています.細かい文言はもはや思い出せませんが,肝心な内容は次のようなものだったと覚えています.

そうかも知れません.しかし,その翻訳が正しいかどうかをチェックするにも英語能力は必要になります.

2016年にはそのグーグル翻訳が,翻訳エンジンをニューラルネット基盤に変えるとの発表があり,2017年当たりからはグーグル翻訳は物凄く改善された話をあちこち耳にしてきたものです.今度はどこかの教室での雑談ではなく,れっきとしたニュースメディアにも似たような話をしているのをみかけたものです.しかしながら,上記の指摘はいくら技術が発達してきても通用する話だと思います.当時の記事でも,似たような話でまとまった気がします.同じ論理がプログラミング教育にも通用するものではないでしょうか.プログラミングもある種の言語であり,似たような話になってくると思います.実際,「プログラミング言語」と呼びますね?

その特殊な言語を仕事としては使わない人ならば,多くの学習時間を費やさず通訳家を雇うのは悪くない選択肢だと思います.しかしながら,一回切りで終わる程度の頻度ではなく,ずっと何かをやっていくような状況,つまり仕事としてその言語を使い続ける分には,最初から通訳なしに自分でもお話できるようになるのがベストだと思います.

もし,それが本当に難しく,常に通訳を伴うような状況を想定しても,通訳が正しいかどうかを判断する程度の能力は必要です.社会学あたりには似たような状況の「プリンシパル=エージェント問題」というものもあるそうです.しかし,まだ意思も持たず依頼主を騙したことで利益も得ない人工知能ツールにそのようなややこしい概念まで入れなくても,それが出力してくれるものが正しいものなのかが判断できる程度の能力を備える必要はあると思います.

 

メディア学部 盧 承鐸

2023年12月11日 (月)

八王子市内の飲食店を元気にするプロジェクト演習『企業・団体のプロモーション技法』の活動事例

2023年11月24日 (金) 投稿者: メディア技術コース

人体を健康メディアとしてとらえメディアをつかって自らの健康をデザインするための研究を行なうという新しい研究領域としての健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。

今回はメディア学部のプロジェクト演習「企業・団体のプロモーション技法」の1コマの活動を紹介したいと思います。このプロジェクト演習は企業やボランティア団体の活動を支援するためにイベント広報や販売促進用の出版物・紙媒体を制作する課題を100分で、課題提示・デザイン制作・デザインレビュー、を実施するユニークな演習です。

この演習の目的は以下としています。
・実際に使用されるデザインを制作する
・短時間でイメージをデザインに落とし込むトレーニングを半年間で14回実施
・多くの学生のデザイン制作物とそのデザインレビューに参加
・プロのデザイナーによるデザイン制作事例を見る
・学生本人のポートフォリオを14回の授業で14件を増やし充実させる

これらを授業時間内の百分間で完了させるためのポイントは以下の4点です。
1.デザイン制作時間を考慮した課題設定
2.最初は名刺デザインから、店舗用ポップ、イベントポスターと段々と高度化した課題
3.デザインツールcanvaのテンプレートベーストデザイン、高度な編集をワンクリックで実現
4.毎回のデザインレビューにより学生個人の飛躍的なレベルアップ

この回の課題は八王子市大横町にあるカフェGrassHopperIIのメニューのリニューアルデザイン制作でした。
この時点までに使用されていたメニューはワードで制作した文字情報のみの簡素なものでしたので、オーナーの沼田氏と交渉して、メニューのリニューアルをこのプロジェクト演習の課題にさせていただくことの了解をいただきました。

Menuold

実際に演習で完成したメニュー案10点ほどの中からオーナーに選んでもらったのが神田柊吾さん(3年生)がデザインした下のメニューになります。美味しそうなメニューのイメージが伝わって、オーナーにも大変に喜んでもらいました。

Menunew
後日、神田さんと千種でお店を訪問して、簡単な授賞式を行ない、副賞としてカレーをご馳走になりました。

Photo_20231123143201


2023年11月24日 (金)

視点のすぐ近くは見えない

2023年11月22日 (水) 投稿者: メディア技術コース

 前回記事は講義「CG数理の基礎」での投影変換の授業紹介でした。まだ読んでいない人は参照してください。
 
 履修生からの以下の質問への回答を今日の記事で紹介します。
 
---
後方クリッピング面があるのは無限に続くのを防ぐ目的であると理解できるのですが、前方クリッピング面はなぜあるのでしょうか? カメラの座標を原点とした四角錐型では不都合があるのでしょうか?
---
 
 投影変換の設定として3次元空間(カメラ座標系)に六面体(四錐台)の視界を設けます。6つの「クリッピング面」で最終表示対象の範囲になるように切り取ることになります。視点から視線方向を向いて上下左右を4つの面で切り取るのは直感的にわかります。
 
 なのに、なぜ目の前の前方クリッピング面と視点から遠くの後方クリッピング面で前後を切り取るのか、確かに理解しがたいですね。特に目の前の場所を前方クリッピング面で範囲外に設定する理由が。
 
 簡単に答えを言うと「0で割り算できないから」です。ここで、前回記事の図を再度掲載します。
 
 Projectionxform
 
 視点から前方クリッピング面までの距離は変数nで示されています。前方クリッピング面の4頂点は変数l, r, t, b, nを使って表されます。冒頭の質問にあるように四角錐の視界を使うということは前方クリッピング面が無限に小さくなり視点(原点)に収斂(しゅうれん)することになります。つまり、l, r, t, b, nは全部0になり、4頂点とも(0,0,0)になります。
 
 この場合、後方クリッピング面の4頂点のxy座標は計算できません。いずれも0分の0になってしまいます。投影変換(透視投影)行列の要素も、16要素のうち4つについて0分の0が生じて設定不能です。
 
 数式の計算ができないから、という理由では納得しづらいでしょう。もう少し直感的な理由として幾何学的な説明をしてみましょう。それは「無限に大きくするという計算はできないから」ということになります。
 
 近くの物は大きく見え、遠くの物は小さく見えるように変換するのが透視投影です。前方クリッピング面を視点に収斂させて四角錐の視界にしてしまうと、限りなく視点に近い物を無限に大きくすることになります。これは不可能だから、ほんの少しでよいので視点から離れた位置に前方クリッピング面を設定するのです。必然的に四角錐ではなく四錐台の視界になります。
 
 実務的には、前方クリッピング面までの距離nと後方クリッピング面までの距離fとの比(f/n)が1万程度を超えない設定ならばその後のCGの計算処理には支障ないです。n=10cmとすればf=1000mと設定できます。これなら大抵のCGの場面で切り取っても大丈夫そうですね。
 
 宇宙空間のように遠い場所は一度に扱えないし、f/nの値が百万とかの設定もNGなのはなぜ、という疑問も生じますが、その話題は別の機会にしましょう。
 
 現実世界でも視点に限りなく近い場所の物を見るということはないですから、四角錐の視界を設定できなくても、四錐台の視界で十分と言えるでしょう。
 
メディア学部 柿本正憲

2023年11月22日 (水)

3次元から2次元への計算

2023年11月20日 (月) 投稿者: メディア技術コース

 2年次後期の講義科目「CG数理の基礎」はCG技術の基本的な概念や手法を理解することを目的にしています。画素を塗りつぶす過程、頂点を変換する過程、など地味な内容です。数少ない3次元CGの話題として、先日の授業では投影変換を取り上げました。
 
 CGの場面を構成する部品(キャラクタ)は多くの場合、多数の三角形(3頂点)の組合せです。制作者の想像上の3次元空間に存在する各頂点が、最終表示に使う現実の2次元平面画面のどの場所に対応するかをコンピュータが計算します。
 
 部品(model)各頂点の(x_m, y_m, z_m)の数値は「ビューイングパイプライン」と呼ばれる4種類の行列の乗算を経て画面(screen)上の点(x_s, y_s)に変換されます。この過程で3次元から2次元に変わる本質的な変換が投影変換です。投影変換としてCGでよく使われる透視投影は次の図のように「カメラ座標系」から「正規化デバイス座標系」に変換します。
 
Projectionxform

 カメラ座標系ではビューボリューム(視界)という六面体をデザイナーが設定します。視界は最終的な表示画面の範囲に対応させる3次元の範囲です。原点から放射状に拡がるこの形状はフラスタム(四錐台)と呼ばれます。視界のことをビューフラスタムと呼ぶこともあります。
 
 カメラ座標系の原点はカメラ位置(視点)で-z方向が視線です。視点から離れると視界が段々拡がるのは直感的にも理解しやすいでしょう。そして変換後の正規化デバイス座標系では視界が立方体に変形します。カメラ座標系の各三角形(図には描いていない)は正規化デバイス座標系の三角形に変換されます。
 
 図aの視点に近い小さな長方形(前方クリッピング面)が図cで同じ向きの一辺が2の正方形に変形します。前方クリッピング面のちょうど反対側の大きな長方形(後方クリッピング面)も図c右奥の一辺2の正方形に縮小されます。これに伴い、視点に近い三角形は拡大され視点から遠い三角形は縮小されます。人間がものを見るときの結果と同じです。
 
 この投影変換により画面で表示される形に近いものになります。その証拠に、投影変換の次の段階「ビューポート変換」にはxy座標だけが送られz座標は無視されます。つまり大まかには投影変換により3次元形状が2次元形状になると思って構わないのです。
 
 この授業で履修生から次のような質問がありました。
 
---
後方クリッピング面があるのは無限に続くのを防ぐ目的であると理解できるのですが、前方クリッピング面はなぜあるのでしょうか? カメラの座標を原点とした四角錐型では不都合があるのでしょうか?
---
 
上下左右の範囲を視界として区切るのは直感的です。後方を区切るのはまだしも、手前まで区切るのは確かに人間の視界とは違いますね。この回答は次回紹介します。
 
メディア学部 柿本正憲


2023年11月20日 (月)

深層学習の落とし穴

2023年11月 3日 (金) 投稿者: メディア技術コース

渡辺です。ブログはしばらくご無沙汰してしまっておりました。今回は、「深層学習」(Deep Learing)について思うところを書いていきたいと思います。

「深層学習」とは、元々は脳の神経細胞(ニューロン)の仕組みを倣った「ニューラルネットワーク」と呼ばれる理論体系がベースとなっています。詳しい話はここでは省きますが、ニューラルネットワークの仕組みをより多層に構築し、さらに学習を実現するための様々なアイデアが盛り込まれています。2015年、深層学習を用いて開発された「AlphaGo」というシステムが、当事の囲碁の世界最高棋士に勝ったことで有名となりました。それ以後、様々な応用に用いられていますが、有名なものとしてはヒントとなる文章から画像を自動生成する「Stable Diffusion」などの画像生成AIや、日本語や英語などの自然言語による質問にやはり自然言語で回答する「ChatGPT」があります。

これらの技術があまりにも衝撃的であるため、様々な分野で深層学習が注目されています。実際に成果が挙がっていなくても、「深層学習を用いた」というだけで注目されているということも、たまに見受けられますね。

それはともかくとして、最近よく感じるのは「学生が研究で安易に深層学習に手を出す」ということです。深層学習は確かに凄い理論であることは間違いないのですが、有用な成果を挙げることは決して容易ではありません。深層学習をプログラム内で用いる方法は、検索すればすぐに出て来ますし、自分のPCにインストールして簡単に動かすことができます。それを実体験した学生が、「自分でもまったく新しい成果が挙げられるかも」と期待するのは無理もありません。しかし、そこに落とし穴があります。

実際のところ、深層学習が有効に働くには多くの「コツ」が必要となります。入力データをどのように揃えるのか、パラメータや評価関数をいかにうまく設定するか、どのような深層学習理論を用いることが適切なのか、どういったデータを出力することで有用性が出せるのかなどなど、様々な要因があります。こういったことは、決して「試しに触ってみた」というレベルで身につくものではなく、平たく言えば「深層学習を使う練習と実践」が必要になるわけですね。ですが、研究で深層学習を利用したいという学生のほとんどは、実際にはほぼ未経験の状態なことが多く、なかなか思い通りの成果が挙がることはありません。「何か変な画像が出力されてしまいました」という状況ならまだマシで、大抵は「そもそも出力が得られてない」という段階で終わることも多いようです。

また、深層学習を利用する手法だと、うまくいかないときにどうすればいいのかの判断が非常に難しいという特性があります。深層学習を用いない、演繹的な手法だと、うまくいかないときもどの部分が悪いのかを検討する余地があります。しかし、深層学習だと「どうすればよくなるのかさっぱりわからない」となってしまうことが結構あります。

深層学習を研究に取り入れること自体については、非常に有効となる可能性はあります。ただ、それならば事前に深層学習についてよく理解しておくことが重要だと思います。

(メディア学部教授 渡辺大地)

2023年11月 3日 (金)

オープンキャンパスでの言語メディア研究室の研究紹介

2023年8月30日 (水) 投稿者: メディア技術コース

2023年8月6日と20日に開催されたオープンキャンパスに言語メディア研究室も参加し、言語メディアに関する研究紹介を行いました。両日とも、当研究室で現在進めている10個の研究テーマについて来場者の皆様に紹介しました。12枚のポスターを展示するとともに、大型ディスプレイでデモも実施しました。

 

Cl1
8月6日に研究紹介してくれた研究室メンバーです。

Cl2
8月6日は、大型ディスプレイを使って、小説を分析する目的と手順について詳しく説明しました。

Cl3
8月20日は、大型ディスプレイを使って、広東語を楽しく学べるゲームアプリケーションを来場者に体験してもらいました。5つの項目のそれぞれで5問ずつ、計25問の問題が出題されます。広東語の単語や文に関して、文字列を見たり発音を聞いたりして正しい選択肢を来場者に選んでもらいました。

Cl4
20名以上の方にゲームアプリケーションを体験していただけました。そのうち、25問すべてに挑戦してくれた方のスコアを「広東語スコアボード」に記録しました。ホワイトボードに、来場者のハンドルネームとスコアを記録していきました。オープンキャンパス終了後に最高点を確認したところ、最高点は23点/25点でした。中国語や広東語に特に詳しいわけではない高校生の方がベストのスコアでした。おめでとうございます!
現在、このゲームアプリケーションは改善を続けています。来年の春ごろに研究発表することを予定しています。詳細については、その研究発表を楽しみにお待ちいただければと思います。

Cl5
8月20日に研究紹介してくれたメンバーです。片付けの時の写真です。

 

猛暑であったり、時々激しい雨が降ったりする中、八王子キャンパスまでご来場くださり、オープンキャンパスにご参加くださった皆様、誠にありがとうございました。
(文責: 松吉俊)

 

2023年8月30日 (水)

無限遠にある光源

2023年6月28日 (水) 投稿者: メディア技術コース

3年生向けの講義「3次元コンピュータグラフィックス論」の授業での履修生からの質問とそれに対する回答を紹介します。「シェーディング」(CG形状モデル表面の輝度を求める照明計算)というテーマの授業回で、光源の種類について説明した下記のスライドについての質問です。
 
Lightsources
 
質問:
 
平行光線に関して、「点光源が無限に遠いところにある」という説明がいまいちよくわかりませんでした。
 
回答:
 
実世界で無限遠というのは想定できません。あらゆる光源は有限の位置にあるわけです。実は無限遠はCG描画計算の都合で用意された架空の想定です。特定の向きから光線が平行に降り注ぐことから「平行光線」と呼びます。光源が無限に遠いと想定すると、少ない計算量で物体表面の1点の輝度計算(照明計算)ができます。そしてその結果はある程度遠いところにある点光源から照らされた結果とほとんど同じです。
 
であれば、わざわざ遠い有限の距離を設定するよりは架空の無限遠設定で計算するのがいい、ということになります。そうすると、後で出てくる「距離の2乗で割り算」という計算をしないで済ますことができます。1回の照明計算で、引き算3回、掛け算3回、足し算2回(以上距離の2乗の計算)、それと割り算1回を省略できます。
 
もちろんそれぐらいの計算はきわめて短時間で実行できます。しかし、CG描画では各頂点で照明計算を行いますから、仮にシーン中に10万頂点あれば10万回の上記計算が節約できます。やや極端ですが、同じ条件下で点光源10個を平行光線10個に置き換えれば100万回節約できます。
 
もっとも近年ではGPUの処理速度が以前よりも高まったため、1フレーム(リアルタイムCGなら16ミリ秒)のうちの数100万回程度の乗算や除算はさしたる影響もない、という判断もあり得ます。ただ結果がほとんど同じなら、無駄な計算をしないために無限遠の光源を設定すべきでしょう。
 
無限遠とは言っても向きは確定します。平行光線の位置の設定に際しては向きのベクトルを指定することになります。例えば空間内のある1点(10, 5, 20)に存在する点光源(もちろんこれは有限)の位置は(10, 5, 20, 1)と設定します。これを(10, 5, 20, 0)と設定すれば向き(10, 5, 20)の無限遠にある平行光線とみなされます。
 
3次元ベクトルではなく4つ目の次元をもったベクトルで位置を指定し、無限遠かどうかは4番目の成分が0かどうかで判定します。このような4次元の座標は同次座標と呼ばれ、数学的に3次元空間での無限遠の向きを有限の位置と同じ枠組で設定できます。
 
少し制作面の話をしましょう。晴天の屋外のシーンであれば太陽を想定した無限遠の平行光線を使えば十分です。
 
一方で屋内のシーン、特に暗めの部屋であれば無限遠の光源は使わずなるべく有限位置の光源を使う方が雰囲気が出ます。この講義では説明しませんがスポットライト(特定の向きに近い範囲だけ照らす点光源)も併用すると効果的です。
 
メディア学部 柿本正憲

2023年6月28日 (水)

ChatGPTの爆発的なブームの観測法としてのGoogle Trends (Part1)

2023年5月19日 (金) 投稿者: メディア技術コース

新しいメディア学の研究テーマに取り組んでいる全国唯一の健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。人体を健康メディアとしてとらえメディアを活用して自らの健康をデザインしたり、多くの人たちに役立つ健康改善するための健康アプリを制作するための研究を行っている研究室です。

現在、生成AIとしてChatGPTが世界じゅうの国、学校、企業、人々を巻き込んだ大ブーム・大論争になっていますが、皆さん個人としてはどうでしょうか?大ブームと大論争といって定量的に測定できるのは大ブームですので今回はその大ブームの様相について話していきたいと思います。

物事を検索するときにGoogle検索を使用するようになって久しいですが、Googleのサービスとして、Google検索のキーワードの検索数の経年変化を観測することができるGoogle Trendsというものがあります。Wikpediaによると以下のような説明があります。

Google Trends(グーグルトレンド)は、ある単語がGoogleでどれだけ検索されているかというトレンドをグラフで見ることができるツール。公開は2006年5月10日。日本版の公開は2008年10月28日。
[概要]
Google Trendsでは、入力した単語の検索数をグラフで示してくれる。このときその単語に関連したニュースを見る事ができ、特に検索数が多いときに何があったのかが分かるようになっている。特定の国、期間に絞ったグラフを見ることもでき、また世界中の都市や国、言語毎にどこでの検索が最も多いのかのランキングも提供される。さらにコンマで区切ることにより複数の単語のグラフを比較することも可能である。
リアルタイムの検索トレンドとして急上昇ワードを見ることができるだけでなく、検索キーワードから1年を振り返るなどで、長いスパンでの検索トレンドから毎日のニュースまで幅広く知ることができる。

実際に、分かり易い例として以下のWebアプリ、Webサービスの検索数を使ってみます。
1.Google(1996年~、月間利用者数7億人)
2.Facebook(2004年~、ユーザ数29億人)
3.Youtube(2005年~、月間利用者25億人)
4.twitter(2006年~、月間利用者5.5億人)
5.Instagram(2010年~、月間利用者数20億人)
6.LINE(2011年~、月間利用者1.9億人)
7.TikTok(2016年~、月間利用者数10億人)
8.ChatGPT(2022年~、1億人)

まず、ChatGPTと新興SNSの比較を2004年から現在&世界中で実行してみます。
8.ChatGPT、4.twitter、5.Instagram、7.TikTok、の順です。2010年前後にtwitterとInstagramがブームになってきて、その後にTikTokが2019年にブームの始まりといった感じです。そしてChatGPTは右下で少しだけ変化が見えますが、世界を代表するSNSと比較してその位置が分かるくらいの利用数(検索数)なのでそれなりにインパクトがあります。


Snschatw

左記の例では国内トップのLINEの情報がありませんでしたが、LINEも追加して比較してみます。LINEの利用が年々減少しているように見えるのは、Google検索全体が増えていて、相対的にLINEの割合が減っているためです。そして注目のChatGPTですが、ちょうど2023年4月にLINEとほぼ同等の検索割合になったことが分かります。去年の秋にリリースされたChatGPTがLINEと同等になっていることはすごいことですね。

 

Snschatw_20230519150301

2023年5月19日 (金)

より以前の記事一覧