技術

ネットワークメディア研究室卒研発表会

2023年2月 2日 (木) 投稿者: メディア技術コース

皆さん、こんにちは。

メディア学部は1月30日から2月2日まで卒研発表会が集中開催されています。私たちのネットワークメディア研究室は2月1日に対面の口頭発表形式で最終発表会を実施しました。全員マスク着用ではありますが、対面で発表会ができたのは良かったと思います。レビュアーの森川先生にはたくさんのコメントをいただきました。また、2年生、3年生で参加してくれた人も多く、質問も出てよい発表会となりました。

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今回の発表者は6名で、テーマは以下の通りです。

  • 一方の絵に他方の絵の特徴を度合いを調整し付与するための手法の検討
  • FPSゲームにおける射撃訓練のAIの検討と実装
  • 合成音声を用いた講義動画における発話特徴の学習効果への影響
  • Webを活用した高等学校までの情報科目の教材の提案と試作
  • 画像分類における特定ラベルの正解率を上げる手法の考察
  • BluetoothLEを用いたスマートフォンへの周囲環境通知システム

それぞれが興味を持つ分野の問題発見からテーマを設定し研究を進めてきましたが、時間切れで目標としたところまで到達できなかったテーマもありました。それでも、テーマを設定し、研究手法を検討し、実際に研究を進めて最後に評価実験を行う、そしてそれを論文にまとめ口頭で発表するというプロセスを経験したことはとても大きいと思います。なぜそうするの?なぜそれを選ぶの?なぜそう言えるの?としつこく責められた1年だったと思いますが、そのような考え方や進め方というのは各自の今後の進路において必ず役に立ちます。

あとは卒業論文の最終版の作成が残っています。1月に論文を提出後、発表の準備の過程で新たに考えが整理されたり、良い図やデータの示し方が分かったという人もいたはずです。発表会での指摘も踏まえ、完成に向けてあと少し頑張ってほしいです。

メディア学部 寺澤卓也

2023年2月 2日 (木)

メディア学部とサクラ:サクラがインターネットにデビュー

2023年1月31日 (火) 投稿者: メディア技術コース

新しいメディア学の研究テーマに取り組んでいる全国唯一の健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。人体を健康メディアとしてとらえメディアを活用して自らの健康をデザインしたり、多くの人たちに役立つ健康改善するための健康アプリを制作するための研究を行っている研究室です。

大寒波が猛威を振るっていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

前回に説明させていただいたように、寒波の後には春がやってきます。春と言ったら桜、桜と言ったら入学式ですが、メディア学部にとって桜(サクラ)とはどのような位置付けにあるでしょうか?画像メディアのひとつとしての桜、映像メディアのひとつとしての桜の散る映像、といったものでしょうか?あとひとつは江戸時代から続く、芝居小屋のサクラというお客を誘導する面白い仕組みでした。

通りすがりの人が賑わっている芝居小屋をみると「何か面白い芝居をやっているのかな?」と思わせるため、知り合いや常連客を誘って、お金を払わず芝居小屋に来てもらい、賑やかしな何人かの人と彼らによる掛け声と芝居小屋を出て「この芝居はとっても面白かったねー」とか話題あるいは口コミを投げかけてもらうことなどをお願いし、芝居小屋が実際の有料入場者以上に賑わって、その賑わいが気になる通行人が「どんな面白い芝居なのだろうか」と興味を持ち芝居小屋にお金を支払って入店するということにつなげてきました。

前述のように長い時間ではないですが、似たような心理的に訴求する仕組みとして「サブリミナル効果」という見ている人が感知できない映像メディアの表現法による心理効果があります。つまりサクラが映像メディアに進出してきました。Wikipediaによると

サブリミナル効果(サブリミナルこうか)とは、意識と潜在意識の境界領域より下に刺激を与えることで表れるとされている効果のことを言い、視覚、聴覚、触覚の3つのサブリミナルがあるとされる。閾下知覚とも呼ばれる。サブリミナルとは「潜在意識の」という意味の言葉である。境界領域下の刺激はサブリミナル刺激(Subliminal stimuli)もしくはサブリミナル・メッセージ(subliminal messages)と呼ばれている。

https://www.nikkei-science.com/201402_056.html

とあり、本人の意図あるいは心理を外部からコントロールする仕組みの悪影響を考え、現在では、映画でもテレビ放送でも「視聴者が感知できない映像表現はアンフェアである」としてほとんどの場合サブリミナル効果を使用した映像表現が禁止されています。

そして、今度は芝居小屋のサクラが映像メディアだけでなく、ついにインターネットにも進出きています。インターネットには「賑わい」も「口コミ」も存在するので、とても親和性が高そうです。ステルスマーケティングと呼ばれるこの手法はWikipediaでは以下のように説明されています。

ステルスマーケティング(英: Stealth Marketing)とは、消費者に広告と明記せずに隠して、非営利の好評価の口コミと装うなどすることで、消費者を欺いてバンドワゴン効果・ウィンザー効果を狙う犯罪行為。「ステマ」の略語で知られる。やらせやサクラなどもこの一例に分類される。映画などの映像の中に目視では認識できない短時間の画像などを挿入して脳内に刷り込む宣伝方法で、ステルス機のように相手に気づかれずに宣伝する手法が語源とされる。

英語圏ではアンダーカバー・マーケティング(英: Undercover Marketing)と呼ばれるゲリラ・マーケティングの1つ。日本では明確には違法になっていないグレーゾーンな行為のため、芸能人やインフルエンサーによるペニーオークション詐欺事件以降にステマの存在が認知された後も、まとめサイトなどウェブサイトやSNSにおけるステルスマーケティングが、後を絶たない。欧州連合やアメリカ合衆国では、広告表記のない宣伝行為は『消費者に対する不公正な欺瞞に当たる行為』として、明確に法律で禁止されている。

という風に、グルメサイトでもショッピングサイトでも豊富な「口コミ」により「賑わい」が創出されているため、そこにマーケティングの要素を取り入れて、宣伝効果を高める手法としてステルスマーケティングが使用されています。事実と異なる現状を演出されていることの是非はかなり議論されているので、すでに法律で禁止されている国もあります。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221227/k10013935901000.html

続く


 

 

2023年1月31日 (火)

クイズ回答編:感想コメントから元本を類推するPART2

2023年1月12日 (木) 投稿者: メディア技術コース

新しいメディア学の研究テーマに取り組んでいる全国唯一の健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。人体を健康メディアとしてとらえメディアを活用して自らの健康をデザインしたり、多くの人たちに役立つ健康改善するための健康アプリを制作するための研究を行っている研究室です。

今、大学1年生のフレッシャーズゼミの取り組みとして、最も読みたくなる本を紹介した人を選出するビブリオバトルというワーク実施しました。千種のクラスでは、14人のクラスメンバーを3~4人の4つの小グループに分けて、第1週目は選書とランダムに分けた小グループでの紹介、第2週目は前回とは異なる小グループでの紹介、第3週目は前回および前々回とも異なる小グループでの紹介と小グループ代表の選出+代表選によりクラス内で1名選出、を実施しました。

最初のグループのワードクラウドには「破る」「結末」「卵焼き」とかありました。正解は「461個のお弁当」著者:丸山智、でした。アマゾンに掲載されている書評によると以下のようになっています。なんとなくわかりますね。
「パパの弁当がいい」という息子のひと言から始まったシングルファーザーのお弁当ライフ。「高校3年間、毎日お弁当をつくる!」ことを掲げ、二日酔いの朝も早出の朝も……弁当慣れしない父が作った弁当はなんと461個!
「今日のおかずは最高だった!」
「空豆はにおいがきついから二度と入れないで」
3年間のお弁当を通した父と息子の交流が涙と笑いを誘います。
地方ライブに出れば、その土地のお惣菜を探し、居酒屋では味を盗み、息子のダイエット弁当に知恵を絞る……。旬の食材を使った手作りの弁当には息子に伝えたい想いがぎっしり。
秘伝の調味料、特製おかずのレシピなど、渡辺家の弁当作りの極意も満載!


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2番目のグループのワードクラウドには「ミステリー小説」「執事」「お嬢様」とかあります。正解は「謎解きはディナーのあとで」著者:東川篤哉、でした。同じく、アマゾンに掲載されている書評によると以下のようになっています。なんとなくわかりますね。

執事探偵×令嬢刑事のミステリ、新章始動!
本屋大賞第1位&ベストセラーシリーズの国民的ユーモアミステリ、待望の新章スタート!!
宝生麗子の後輩に天然キャラの新米刑事・若宮愛里が加わり、警視庁に栄転した風祭警部は大きなミスを犯して国立署に舞い戻り、新たなメンバーで難事件に挑むが――!?
富豪の家で“無人だった”はずの部屋から発見された長男の首吊り死体の謎。鍵のかかった土蔵で見つかった骨董好きの老人の遺体と血文字のダイイング・メッセージの謎。雑居ビルの裏で発見された墜落死体とそのポケットに入っていた血の付いたナイフの謎。シェアハウスで殺された看護師と5つの目覚まし時計の謎。アパートで殺害されたイケメン大学生と建設作業員が“煙草を吸っている間に”目撃したという怪しい男の謎。
執事探偵・影山の推理と毒舌が冴えわたる、本格ミステリ。

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3番目のグループのワードクラウドには「例題」「役に立つ」「考える」とかあります。正解は「考える練習帳」著者:細谷功、でした。同じく、アマゾンに掲載されている書評によると以下のようになっています。なんとなくわかりますね。

AIがあらゆる職場に浸透する日も遠くないかもしれません。
そんな時代に私たちに必要とされるのが「自分の頭で考える力」です。
本書は思考法の第一人者が、主に若い世代に向けて「自分の頭で考える」ための方法をさまざまな角度から解説します。
「無知の知」を知る、何事も疑う、考えるための練習問題等を通じて、あなたの思考回路が動きだします。
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4番目のグループのワードクラウドには「重ね合う」「きやすい」「芥川賞」とかあります。正解は「推し燃ゆ」著者:宇佐美りん、でした。芥川賞から想像ついた人もいたかもしれませんね。同じく、アマゾンに掲載されている書評によると以下のようになっています。なんとなくわかりますね。
【第164回芥川賞受賞作】
逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を“解釈”することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し――。デビュー作『かか』が第33回三島賞受賞。21歳、圧巻の第二作。

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そして、上述の4名による決戦のビブリオバトルを実施した時、同じく発表者以外からコメントをもらいました。その時のワードクラウドが以下のようになりました。4名の時の混在といった部分も見えています。
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そして4名によるビブリオバトルを実施したときの投票結果が以下のようになりました。他の人を抑えて、「考える練習帳」著者:細谷功をビブリオバトルで説明した瀬戸山さんが選ばれました。
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2023年1月12日 (木)

クイズ:感想コメントから元本を類推するPART1

2023年1月11日 (水) 投稿者: メディア技術コース

新しいメディア学の研究テーマに取り組んでいる全国唯一の健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。人体を健康メディアとしてとらえメディアを活用して自らの健康をデザインしたり、多くの人たちに役立つ健康改善するための健康アプリを制作するための研究を行っている研究室です。

今、大学1年生のフレッシャーズゼミの取り組みとして、最も読みたくなる本を紹介した人を選出するビブリオバトルというワーク実施しました。千種のクラスでは、14人のクラスメンバーを3~4人の4つの小グループに分けて、第1週目は選書とランダムに分けた小グループでの紹介、第2週目は前回とは異なる小グループでの紹介、第3週目は前回および前々回とも異なる小グループでの紹介と小グループ代表の選出+代表選によりクラス内で1名選出、を実施しました。

3回とも選書した同じ書籍を異なるメンバーに紹介し、その発表あるいは説明に慣れてもらうことと、多くの人から意見をもらうことを実施しました。コメントに関しては本当は、口頭で実施した方がより良いのですが、時短と記録に残すという意味で、Google Classroomのコメント欄に記入してもらいました。

以下、4つの小グループには代表の4名の発表者がいて、その発表に対して残りのグループ全員の学生からコメントをもらいます。そのコメントをテキストマイニングしてワードクラウドに変換してみました。文字の大きさはそのコメント全文の中の特徴的な言葉です。色は品詞に対応しています。

最初のグループのワードクラウドには「破る」「結末」「卵焼き」とかありますね。どんな書籍でしょうか。
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2番目のグループのワードクラウドには「ミステリー小説」「執事」「お嬢様」とかありますね。どんな書籍でしょうか。

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3番目のグループのワードクラウドには「例題」「役に立つ」「卵焼き」とかありますね。どんな書籍でしょうか。

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4番目のグループのワードクラウドには「重ね合う」「きやすい」「芥川賞」とかありますね。どんな書籍でしょうか。

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ということで、答えは次回以降に提示したいと思います。

 

2023年1月11日 (水)

「アニメ的な髪の毛をゲームで再現するために」(研究紹介@NICOGRAPH2022)

2022年12月17日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の三上です.

本日は三上・兼松研究室の岩田摩由利さんが,NICOGRAPH2022で発表した研究について紹介します.

この研究は三上・兼松研でも研究例のある,手描きによる作画の特徴をゲームで再現しようという研究の1つです.髪の毛はキャラクタの特徴を強く押し出す重要な構成要素の1つです.さらに,風にたなびく様子や書き上げる様子など,動きも伴います.

このような手描きによって表現されたキャラクタの髪の毛を,CGなどを利用してアニメなどに利用する事例は多くあります.その際には,髪の毛が自然とたなびくように物理シミュレーションにより動かしたり,これとは逆に,意図的に動かすためにモデルとして生成し意図的に動かしていく方法があります.

今回は,キャラクタの動きに合わせてリアルタイムに描画する,ゲームでの実装を想定し,アニメやゲームのキャラクタに用いられることの多い紙の束に対して制御するための骨格構造を入れる手法を採用しています.

この手法は,その後のビジュアル表現が容易であることや,演算コストが比較的低い点から,ゲームにおいてアニメ的な効果を加えるためにも適した技法なのですが,そのためにはたくさんの髪の束に制御するための骨格構造を与える必要があります.

そこで,自動(半自動)で髪の毛に骨格構造を与えようと渡来したのがこの研究です.現在はプロトタイプの実装が住んでおりますが,これから最終発表に向けさらなる実装を進めていきます.

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文責:三上浩司

 

2022年12月17日 (土)

W杯対ドイツ戦勝利のインパクトは大臣辞任の約145倍(PART2)

2022年11月29日 (火) 投稿者: メディア技術コース

新しいメディア学の研究テーマに取り組んでいる全国唯一の健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。人体を健康メディアとしてとらえメディアを活用して自らの健康をデザインしたり、多くの人たちに役立つ健康改善するための健康アプリを制作するための研究を行っている研究室です。

中学校・高校とずっとサッカー部でひたすらストイックに練習してきた身としては、今カタールで実施しているワールドカップサッカーは4年に一回の眠れない夜・睡眠不足の日々が続きます。2022年11月23日に日本のA代表がドイツのA代表に勝利するという快挙を成し遂げました。シドニーオリンピックで日本代表がブラジルに勝ったのではと記憶されている方もいらっしゃると思いますが、こちらはA代表でなくU22代表なので、世界中の評価は相当に差があります。

試合内容をレビューする報道メディア的なアプローチもありますが、ここでは日本勝利のインパクトをSNSを活用して定量的に調べてみました。そのインパクトとの対比において、先日のブログにて、大臣辞任というバッドニュースは、Yahoo!リアルタイム検索による直近30日間のデータでは、ツイートのピークは11月2日の約2700ツイートで、感情グラフは流石にほぼネガティブで99%もの割合でした。

一方、11月23日深夜の対ドイツ戦の勝利の分析をしてみました。キーワードとして、まず、ドイツ+日本+サッカーとして30日間のツイートグラフを確認したのが以下になります。

ツイートのピークが約2万8千件となっていて、約10倍です。これではタイトルほどのインパクトありませんね。そこでキーワードをいくつか変更してみました。
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次にヒットしたキーワードが「勝った」です。先ほどの2万8千件よりは10倍以上増えて、約28万5千件です。これで105倍です。人間の心理を考えると、ずっと試合を見ていて、試合終了時に出る言葉は、日本を応援している日本人としては素直に「勝った」という言葉がでますよね。でもこれでも145倍までは到達していません。


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そして、最後に最もインパクトが大きかったキーワードを見つけました。それは「ドイツ」です。なんとツイートのピークは39万2千件です。大臣辞任に比べて145倍のインパクトでした。

これまでの3パターンを分析すると、日本がドイツに勝って喜んだ人は、どのような言葉をツイートするでしょうか?「ドイツ」に「勝った」とか、「ドイツ」に「勝利」とか、でしょうか。念のために「勝利」というキーワードも同じツイートのピークのタイミングに18万5千件ものツイートがありました。

こういった試行錯誤することは、データサイエンスという学問分野で今世界中でAIとともにあるいはAI以上に注目されています。

 

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2022年11月29日 (火)

CG画像作成処理の最終段階「トーンマッピング」

2022年11月10日 (木) 投稿者: メディア技術コース

 2年次後期の講義科目「CG数理の基礎」では、コンピュータグラフィックス(CG)技術を学ぶ基礎となる概念を勉強します。基礎なので、3次元CGの話題は少ししか出てきません。
 
 第7回授業「ディジタルカメラモデルと投影変換」はその数少ない3次元CGの話題です。授業冒頭では、3次元CGの処理(1枚のCG画像を作成する処理)は写真撮影手順と類似点があることを説明しました。以下のスライドです。
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 この授業では事前に資料を公開し、履修生から質問を受け付けて、授業中にはそれらを紹介し回答します。ここのスライドでは3つの質問がありましたので私の回答とともに紹介します。
 
 【質問】
 
 屋外なら太陽があり、室内ならライトがあるように、写真を撮るときに元から光源がある場合が多いと思います。その場合、光源に合わせてカメラの位置や向きなどを調整するため、手順2と手順3の順序が入れ替わると考えました。そこで質問なのですが、三次元CGにおいて、1~5の手順の順番が前後することはあるのでしょうか?
 
 【回答】
 
 質問の答えはYesです。前半でおっしゃる通り、場合により2と3は入れ替わることがあるでしょう。
 
 状況によっては1のうち「モデルの配置」もその順番の前後に入ってくるでしょう。
 
 ただし、4と5はそのままですし、1のうちの「モデルをつくる」もやはり一番最初です。
 
 【質問】
 
 カメラを設定してから光源を用意するのはどういった意図によるものなのでしょうか。先に設定したカメラの画角の中で、被写体が特に綺麗に写る位置に光源を配置するためでしょうか。
 
 【回答】
 
 一つ前の質問でもあるとおり、カメラの設定と光源の用意は場合により順番は変わります。実写の話で説明すると、カメラ設定が先で光源設定が次、というのはスタジオでの写真撮影を想定した場合です。
 
 自然光での撮影や照明条件が固定の室内だと、光源が先でカメラが次、ということになります。
 
 屋外の撮影であっても、人間の被写体にレフ版で光を当てる場合はカメラが先で光源が次、と言えそうです。これは質問の後半でおっしゃっているケースですね。
 
 【質問】
 
 5番の画像の調整の際にはどのような処理を行うのですか。
 
 【回答】
 
 あまり難しい話ではなく、意図通りの画像になるように明るさやコントラストの調整処理を行います。具体的な技術は次回授業で紹介します。
 
 より発展したトピックとしては「トーンマッピング」が、CGの処理の最終段階での画像の調整処理です。
 
 本講義では触れませんが、特に実写のような現実感のあるCGの描画処理で使われる技法です。各画素の輝度を計算する途中は実数計算を行います。輝度の値の範囲は0から数万あるいは数億にもなります。
 
 このような画像はHDR(High Dynamic Range)画像と呼ばれます。ただし、最終的なCG出力画像は輝度がRGBそれぞれ[0,255]の範囲(LDR, Low Dynamic Range)に収まる必要があります。
 
 最終段階では必ずHDRをLDRに変換する必要があるのです。このときの処理がトーンマッピングです。明るさやコントラストの調整はもちろんなのですが、どの部分がより細部まで見えるようにするかの調整がトーンマッピングの設定では必要です。
 
 もちろん設定内容によっては、明るすぎて真っ白に見えてしまう部分(白トビ)や暗すぎて真っ黒に見えてしまう部分(黒ツブレ)ができてしまいます。それは仕方ないことですし結果的に現実味のある画像ができます。
 
 欲張って画面全体がなるべく細部までわかるようにトーンマッピングを設定すると、全体的にコントラストが弱く平板でメリハリのない印象を与える画像になってしまいます。
 
 【質問回答は以上】
 
 最後の回答で説明したHDR画像に対するトーンマッピングの例を紹介しましょう。
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 「CG数理の基礎」としては発展トピックですが、実は「メディアのための物理」という別科目の教科書で紹介しています。この教科書から抜粋しました。右の図(b)が画面全体が見やすくなるように処理した結果です。画像を区分けした部分画像ごとに異なるトーンマッピングを施しています。

参考書籍:
大淵, 柿本, 椿, 「メディアのための物理 ーコンテンツ制作に使える理論と実践ー」, コロナ社, 2022年4月.

メディア学部 柿本正憲

2022年11月10日 (木)

メディア専門演習「ネットワーク構築」の紹介

2022年11月 9日 (水) 投稿者: メディア技術コース

皆さん、こんにちは。

今回は私の担当しているメディア専門演習「ネットワーク構築」について紹介します。インターネットはすでにインフラになっていて、皆さんもスマートフォンやPCを使って毎日利用していると思います。すでに「利用している」という意識もないかもしれません。インターネットの仕組みは講義でも学修しますが、実際にどうなってるの?というのはなかなか体験的に理解する機会がありません。そこでこの演習では、実際に本格的なルーターなどのネットワーク機器を用いて演習室内でネットワークを作ります。演習室内でインターネットを再現することはできませんので、実際には小規模なLANをいくつか作って相互につなぐなどの演習を通して理解を深めます。

演習は個人作業とグループ作業の両方があります。初回には演習室PCの外付けSSDへLinuxをインストールし、演習ではLinuxを利用します。

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写真はグループ作業が始まって2回目の時の演習の様子です。細長い机の上にある大きな薄い箱がルーターです。このころはまだ、分担して進めていてもお互いに自分のやることが完全には理解できていないため、なかなかうまく動きません。理論的な理解の差が手順や設定の差となっても現れトラブルが続出しますが、回を重ねるごとに分担を入れ替えることでメンバー全員の理解が深まり共通的になっていきます。そして、自分たちでトラブルシューティング(問題の原因発見と解決)ができるようになっていきます。

演習も後半に入り今後はVLANなどの技術も入ってくることで複雑さを増しますが、わかると面白い!と思ってもらえる演習にしていきたいと思います。

(メディア学部 寺澤卓也)

2022年11月 9日 (水)

最先端のARやVRの制作の前に②エイゼンシュテインのモンタージュ理論

2022年10月18日 (火) 投稿者: メディア技術コース

新しいメディア学の研究テーマに取り組んでいる全国唯一の健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。人体を健康メディアとしてとらえメディアを活用して自らの健康をデザインしたり、多くの人たちに役立つ健康改善するための健康アプリを制作するための研究を行っている研究室です。

最近、プロジェクションマッピングやAR・VRの活用において多数のCG映像作品を見ることが増えてきました。そこで今回はその際に役に立つ映像テクニックあるいは心理学的効果として、前回のクレショフ効果につづき、最も有名なモンタージュについて紹介します。

モンタージュとは、日本の警察が犯人捜しで、目撃者がモンタージュ写真を選んでいくシーンがあまりに有名ですが、映画の世界ではちょっと意味合いが違います。今回はその中でもエンゼンシュテインのモンタージュ理論についての話題です。

Wikipediaによると
モンタージュ(montage)は、映画用語で、視点の異なる複数のカットを組み合わせて用いる技法のこと。元々はフランス語で「(機械の)組み立て」という意味。映像編集の基礎であるため、編集と同義で使われることも多い。

フィルムのつなぎ合わせが独自の意味をもたらすことは、映画の創成期から知られていた。たとえば米国エジソン社の『メアリー女王の処刑 (The Execution of Mary Stuart) 』(1895)では、撮影途中でわざとカメラを停止する「中止め」を用いて、首がギロチンで落ちるショッキングな演出を行った。また、映画の魔術師と呼ばれるメリエスは、編集によってさまざまな映像的トリックを試みただけでなく、『月世界旅行(Le voyage dans la Lune)』(1902)の最後のシーンでは「コマ撮り」のアニメーションを実現している。

この後のモンタージュ技法は、純丘曜彰によれば、大きく2つの方向へ分岐するとされる。一方はソ連の映画監督セルゲイ・エイゼンシュテインに代表されるエイゼンシュテイン・モンタージュであり、他方は米国の映画監督D・W・グリフィスに代表されるグリフィス・モンタージュである。

エイゼンシュテイン・モンタージュは、当時流行し始めたソシュールの構造主義の影響を受け、台本の言語的要素を映像に置き換えて編集していく手法であり、エイゼンシュテインの映画『戦艦ポチョムキン(1925年)』の「オデッサの階段」がその典型とされる。

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この現在ウクライナにあるオデッサ(オデーサ)の階段は、当時ソビエト連邦にはポチョムキンの階段と呼ばれ、今でも戦争中な場所で今現在このままであるかどうかはわかりません。

この映画史上最も有名なポチョムキンの階段シーン(オデッサの階段、1925Movie, Russia)についてのさらに詳しくした解説が以下になります。
https://kokai.jp/escalera-de-odesa/
ウクライナのオデーサ(オデッサ)にある長さ142mの「ポチョムキンの階段」を舞台とした、世界の映画史上最も有名な6分間シーンです。ソビエト連邦の映画監督セルゲイ・エイゼンシュテイン(ロシア語:Серге́й Миха́йлович Эйзенште́йн Sergéj Michájlovič Ėjzenštéjn, Sergei Mikhailovich Eisenstein)により、1925年に製作・公開された名作映画「戦艦ポチョムキン」のオデーサ市民に対する虐殺シーンです。エイゼンシュテイン監督は映画「戦艦ポチョムキン」で、有名な映像編集の基礎「モンタージュ理論」を確立させています。

モンタージュ理論を確立できたのは、セルゲイ・エイゼンシュテイン氏が一時期、日本人教師に漢字を習っていたからだという説があります。漢字という象形文字の持つ抽象的な概念をデザイン描写的に表現しているという基本コンセプトから、「身」と「美」で「躾」とか「口」と「鳥」で「鳴」になる等、全く別の意味になるという事に興味を持ち、このコンセプトを基にモンタージュ理論を確立したということです。

エイゼンシュテイン、プドフキン、グリゴーリ・アレクサンドロフの共同署名による「トーキー映画の未来(計画書)」(「トーキー宣言」)に、「モンタージュ」についてこう書かれています。

現代の映画は視覚的映像を操作することで、人間に強力に働きかける。当然ながら、その力はさまざまな芸術のなかでも首位の座を占めるものの一つである。映画にこのような強力な働きかけの力をあたえている基本的で唯一の手段は、明らかにモンタージュである。

モンタージュこそ働きかけの主要な手段であるという主張は、疑問の余地のない公理となっており、世界映画文化の磁石となっている。ソヴィエト映画が世界のスクリーンで収めた成功のほとんどは、ソヴィエト映画がはじめて発見し、確立した数多くのモンタージュ手法によるものである。だから、映画をより一層発展させる重要な要素は、観客に働きかけるモンタージュ手法を強化し、拡大することだけである。
山田和夫「エイゼンシュテイン」より


ここでの気づきで象形文字である「身」と「美」からそれぞれの意味を融合したり統合したり超越した意味である「躾」(しつけ)が出来上がることろが興味深いです。「口」と「鳥」で「鳴」となるのも興味深いですね。そして日本にはこのかな混じり漢字を使った俳句や短歌があります。これについても次回以降に紹介したいと思います。

さらにこのように映像のカットを巧妙に組み合わせることで極めて強い印象を視聴者に与えることができる、ということも興味深いです。そしてこのエンゼンシュテインのモンタージュ理論は時代の別の違った利用法をされていきます。これについても次回以降に!


2022年10月18日 (火)

最先端のARやVRの制作の前に①クレショフ効果

2022年10月17日 (月) 投稿者: メディア技術コース

新しいメディア学の研究テーマに取り組んでいる全国唯一の健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。人体を健康メディアとしてとらえメディアを活用して自らの健康をデザインしたり、多くの人たちに役立つ健康改善するための健康アプリを制作するための研究を行っている研究室です。

最近、プロジェクションマッピングやAR・VRの活用において多数のCG映像作品を見ることが増えてきました。そこで今回はその際に役に立つ映像テクニックあるいは心理学的効果として有名なクレショフ効果について紹介します。

Wikipediaによると、
「クレショフ効果」とは、映像群がモンタージュされ、映像の前後が変化することによって生じる意味や解釈の変化のことをいう。一般に映像の意味や解釈は、ほかの映像とのつながりのなかで相対的に決定されていく。本効果は、映画的な説話論の基礎である。

実験として、本効果のもつ意味論的伝染を強調するために、レフ・クレショフは、科学的経験(認知心理学)を開発した。クレショフは、ロシアの俳優イワン・モジューヒンのクローズアップのカットを選び、とくに無表情のものを選んだ。モジューヒンのカットを3つ用意し、3つの異なる映像を前に置いた。

第1のモンタージュでは、モジューヒンのカットの前に、スープ皿のクローズアップを置いた。 第2のモンタージュでは、スープ皿のかわりに、棺の中の遺体を置いた。 第3のモンタージュでは、棺の中の遺体のかわりに、ソファに横たわる女性を置いた。それぞれのシーケンスを見た後で、俳優(モジューヒン)があらわす感情を観客は述べなければならなかった。その結果、観客は、第1では空腹を感じ、第2では悲しみを感じ、第3では欲望を感じたと答えたのである。

とあります。実写映像出身者はこのクレショフ効果をきちんと学修していて、このをクレショフ効果をしっかりと活かしたカット割りを制作に取り入れています。端的に伝えたい意図を明確に鑑賞者に与えることができ、ナレーション不要です。これは言語不要とも言い換えることができます。つまり世界に通じる映像制作手法であると言えます。

このクレショフ効果を活かした作品制作は万能なので、知っているとより効果的な映像作品を制作できますね。

2022年10月17日 (月)

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